四季彩回路

□Story4-1
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連れて来られた先は生徒会室だった。切花は人は物にぶつかったりしたらおしまいだと周囲を警戒しながら入った。
生徒会長は電気をつけて席に座ると切花の方に向く。顔は式に出たときに何回か見たことのある程度で、この距離で見たのは切花にとって初めてのことだった。そもそも、水生達以外人を近くで見ることなどそうそうないことなのだが。

「七鋏切花さん、かな?」
「…そう、ですけど」

口を開いた生徒会長はどこか楽しげに切花には聞こえて、それと同時に何処か違和感を感じた。気のせいだとは思いながら、年上だということを踏まえてあまり使わない敬語で返す。

「どうしてこんな時間にいるのかな?」
「貴方には関係ない…です。」
「そうはいかないかな、ここは学校だからね。」
「貴方こそ、どうして…。」

そこまで言った時、生徒会長の姿が切花の視界の中でぶれた。切花は何かがおかしいと他の場所にも目を向けるが、生徒会長に視点を合わせるとそこだけ異様にぶれていた。

(結界…の気配はなかったけど、異能の感じもしない…。)

切花は眉間に少しシワを寄せると睨むように生徒会長を見た。

「どうしたんだい?具合でも…。」

気遣う生徒会長が切花に近づこうとすると、切花は一歩下がって強い口調で言った。

「来ないで、貴方は生徒会長じゃない、私の知ってる生徒会長じゃないわ。」
「何を言って…。」
「誰なの。」

キッと睨んでなるべく離れて切花は逃げ道を確保しようと扉の前に立つ。
生徒会長はくすりと笑ったと思うと真面目さを残した顔でにいと笑って切花を見た。

「流石に近くだと強い人は騙せないね。」
「乗っ取っているの、それとも既に本物は…。」
「そんな惨いことじゃないよ、この姿は他の誰でもないよ。」

そういうと制服のネクタイを緩めるとふっと姿を変えた。その姿は肩まで伸びる少し赤めの茶髪の女性だった。
切花は何が起こったか理解出来なかった。しかし視界のぶれはなくなり思わず目をこすってからその女性に目を向けた。

「僕の姿はこれだよ、改めてよろしくね、ななチャン。」
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