四季彩回路
□story3
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水生はぼんやりと潰した掌をみていると金属を叩く音が聞こえる。この小屋のインターホンの代わりになっているものだ。
来訪者は花族しかほとんどいない。何故ならばここら辺には魔力の層ーー所謂結界が構築されているからだ。
ドアを開けるとてっぺんからひょこりと出た一際長い紙を弄りながら伏せた目をした切花がいた。
「どうしたの、こんなところに」
「ぐ、偶然通ったから寄っただけよ」
そんなはずはないだろう。こんな山奥、現代の女性となれば来る目的がほぼないと言ってもいいだろう。
くす、と水生は笑うと言いたいことでもあるのかと言いたげな顔で切花が拗ねる。
(ああ、可愛い)
「はは、ごめんよ。何の用だったの?」
「…休日になると貴方、ここに篭りっぱなしでしょう?だから、その…」
「デートのお誘い?」
半ば冗談を含めて聞くと、切花は俯いて背を向ける。冗談なんて久々だな、と心の内で一人笑う。
「…っ、買い物よ!5分くらいなら待っててあげるから早く準備してきなさい!」
「うん、わかったよ」
ドアを閉めると突然現実に引き戻されたような感覚に陥る。
気分が良くない、今日はここにいるべきではないと身体が警告をしているようで、早々にバッグと上着を持って外に出た。