四季彩回路

□story2
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目が覚めると白い天井にオレンジの光が目に付く。眩しさに目を閉じると、目の後ろに残った強い光がみえた。
小さいノートパソコンを眺めて頭の中を整理する。更新されるのは小さな事件と外国の状況、周辺地域の問題くらいだ。

朝食を食べて玄関に出れば幼馴染の椿が塀に寄りかかって待っていて、おはようと一言話してからは特に話すこともなく。
暫くしてから陽平は椿に声をかけた。


「椿さん、今日の天気を更新したいです。」

「今日は晴れ、最低気温は9度で最高気温は15度、降水確率は30%くらい…かな。」


芯のある少しだけ周りの女性よりかは低めのアルトで告げる。空を見上げれば雨なんて降らなさそうなくらいに青空だが、椿が言うことならと陽平は頷いた。椿の予報は全国の気象予報士よりも正確だ。


十字路まで行くと水生が居て、そのまま合流する。水生も先程と同じ質問をして学校に向かう。
段々、和気藹々とした空気になってくると陽平は少しだけ目を細めて二人の背中を見た。笑みを浮かべて話す二人がなぜだか眩しくみえたのだ。そこまでいっても陽平には、それが嫉妬だと気付くことはなかった。




下駄箱からは別々で、また椿と二人きり。陽平は椿に問いかけた。


「椿さん、楽しいですか?」


「…?今はそういう感じじゃないけど。」

「いえ、今ではなくて、水生さんと会話をしている時です。」

「そうだなぁ…」


たのしいよ、とわずかに微笑んで椿は言った。陽平は眉間に少しシワを寄せて、わずかにいじけているような声で言った。


「…たのしい、ってどうすれば…」


だめ、と椿が陽平の口元を抑えた。そして強い目で言った。


「だめ、だ…。知ったらそれはニセモノにしかならないんだ。」


ごめん、と一言言うと、椿は少し先に進んでくるりと振り向く。そして今度は作った笑顔で。


「ほら、朝礼が始まるよ!」
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