四季彩回路
□story1
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教室の扉を開けると朝早いからか眩しく綺麗に薄橙の光が差し込んでいた。思わず目を細めて手で影を作って見ると、光は机を貫いていた。
一瞬目を見開いて、それからその席へ座る。この教室には机と椅子は一つしかない。
七鋏切花の部屋のようになっているのだ。
ぼんやりと座っていると、どんどん日は高くなり橙は白に変わって眩さを増して差し込む。薄いカーテンを閉めると、同時にガラリと扉が音を立てた。
「おはよ、切花。」
「遅いわ、もうこんなに日が高いのに」
「今日は朝礼があったんだ。」
ふわりと微笑む彼は花王水生。その微笑みは僅かながら悲しくも見えたが、切花はそれを見なかったことにした。
撫でるように水生が近くの台に触れると、そこには何も存在しないかのようにするりと、否、 音もなくすり抜けた。
それを見ていた切花は一度目を閉じてから言った。
「…そろそろ時間よ、教室に戻った方がいいんじゃない?」
「そうだね、それじゃあまたお昼に皆で。」
「ええ、また後で」
静かになった部屋の中で、切花は一人、水生のすり抜けた台に触れた。切花が触るとそこには確かに台があり、触れられていた。
「壊してしまうよりかは、良いのよ…。」
ぽつりと呟いた言葉は誰も聞くことはなかった。