頂き物

□WC前、ある日の出来事
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「黄瀬君は悪くないので謝らないでください」―――そう言いたいのに、手に持っていたお盆をかたんと机に置いて抱き締めてくれる手があまりに優しくて、出てくるのは嗚咽だけだ。

トン、トン、と規則正しく背中を撫でてくれる手と、「大丈夫、大丈夫」と囁いてくれる声に、黒子は段々と落ち着きを取り戻していく。

やがて黒子の涙が完全に引いた頃、見計らったかのようにお腹が小さくきゅるると鳴った。

「林檎、食べる?」

クックッと笑う黄瀬に恥ずかしげに「はい」と答えれば、涙の止まった頬にキスをして一旦体を離す。

少しずつ口に運んでくれる黄瀬に甘えて、ゆっくりながらも完食した。

「ん、偉いね黒子っち、全部食べられたよ。もう少しでご飯だから、ご飯食べて、薬飲んで、もう寝ようね。明日は熱下がってるといいねぇ」

優しい口調と撫で撫でと頭を撫でてくれるそれは子供にする仕草のようだったけれど、とても気持ちがよくて黒子は笑った。



翌日。

髪をふわふわと撫でられる感触に、黄瀬は目を覚ました。

「あれ……」

「起きましたか黄瀬君」

「黒子っち!?」

がばりと頭を上げると、黄瀬の頭を撫でていた姿勢のままできょとんと首を傾げた。

「はい。もう朝ですよ、おはようございます」

落ち着いて自分の状態を見てみれば、体に毛布が掛けられている。

きっと、様子を見に来た黒子の母親が掛けてくれたのだろうと容易に想像がついた。

「おはよっス……うあ、俺寝てたんだ……黒子っち、熱は?」

黒子の額に手を置けば、昨日はあれだけ熱かったそこはいつものほんのりとした温かさで。

「黄瀬君がずっとついててくれたので、下がりました」

「体は?だるくない?」

「はい、大丈夫です。黄瀬君と一緒に学校行きます」

「だーめ。念のため今日はお休みしようね」

「もう治りました」

「完全にじゃないでしょ。ぶり返したら大変だから、ね?」

頬を包んで指先でそっと撫でる。

「……電話、していいですか?」

「もちろん。俺だって黒子っちの声聞きたいし、会いたいし。だからさ、今日俺黒子っちの分までまじめに授業受けて、部活も頑張って、そしてまた黒子っちに会いに来るっスから。だから、お疲れさまでしたって、さっきみたいに頭撫でて?」

と、頬にキスをすれば、もちろんです、と頬にキスのお返しが触れた。



to be next scene...



リクエスト
「もしもシリーズで、黒子っちが熱を出してしまうお話」

黒子っちはきっと平熱低いと思います。
現在の日本人の平均平熱は36.2度らしいので、ちょっと低めくらいで。
風邪引きにすりおろし林檎は定番ですよね(・∀・)
お気に召していただけましたら嬉しいです。

お持ち帰りは、リクエストくださった樹瑚様のみ可です。
リクエストありがとうございましたv
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