dream novel

□その距離0センチメートル
1ページ/1ページ


ずっと一緒に居ても分かってもらえない。共に分かち合う人が欲しい。でも、もう諦めていた。

その距離0センチメートル
feat.燃堂力×女主


「…うわっ!」
学校の廊下で誰かに勢いよくぶつかった。相手の比較的柔らかい胸板に当たって怪我はなかったけど、少し鼻がじんじんする。視線を上げていくと、強面の顔に見下ろされていた。燃堂力くん。クラスのみんなに煙たがられているけど見た目が怖いだけで、心の底は凄い純粋で優しい。
「お?何だ?」
「…ごめん燃堂くん、ぶつかっちゃった」
彼との身長差は40cmもあってお互い自然に目線が合わない。手を上げてブンブンさせていることをアピールをする。
「あーわりいな、大丈夫か?」
燃堂くんは大きい身体を屈めて私を見上げた。クラス内で一番身長に差がある私たちは話すだけでも苦労する。燃堂くんがいきなり私の鼻の下に手を当てる。
「わ、な、なに?」
びっくりして仰け反ると後ろにいた斉木くんにぶつかった。そして彼が無言でハンカチを差し出してきた。二人の行動が謎過ぎる。ハンカチを受け取ると、急に燃堂くんに抱きかかえられて走り出した。訳が分からないよ。

「二人とも行動するより言葉で伝えてよ…」
私はぶつかった衝撃で鼻血を出してしまった。保健室で鼻にティッシュを詰め込む。人前で恥ずかしいけど意外と血が止まらない。斉木くんも付き添いで来てくれたけど、そんな大げさなことじゃない。
「わりいな、俺っち昔から身体デカくてぶつかった相手に怪我させちまってよぉ」
「…最近寒くて鼻の粘膜が乾燥するからそれでじゃないかな」
私も身長の所為で色々苦労した。高い所は自分では何もできなかった。時間をかけて策を練るか、周りに助けてもらっていた。どうすることもできないだが、酷く煩わしいと思ったこともあった。だから彼の気持ちは痛いほど分かる。彼が悪いのではない、彼の所為ではないとフォローを入れる度にそれが自分に向けられている言葉のようで楽になる。そんな小さいことと思われても私にとっては大きな問題だ。
「…おめえ、変な奴だな」
燃堂くんが豪快に笑う。斉木くんも口元が緩んでいた。
「おめえもちっせえから色々苦労してんだろ?困ったことあったら俺っちや相棒に言えよ。な!」
そう言って私の頭を撫でた彼の手は大きくて温かくて、思わず涙腺が緩んだ。

20161221


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ