長編・私は貴方の妹です!
□無神家
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「大丈夫か?本当にどこも怪我をしていないんだろうな」
無神兄弟に救出され、私たちは城に用意されている休憩用の部屋の一室で休んでいた。
「はい、大丈夫です」
彼らに鳩尾を蹴られたことは黙っておく。私が半分脆い人間で、不死身の彼らとは違うから、余計に心配をかけてしまっているのだろう。
「あの、お手数をかけてしまって、申し訳ありません・・・」
ソファに座る私を囲むように立っている四人に、私は心底申し訳ない思いで頭を下げた。私が彼らのように力を持っていれば、私を妹だと言ってくれる優しい人たちに迷惑をかけずに済んだのに。
「はあ?お前ばっかじゃねーの?」
「・・・いたっ」
頭を下げたままでいると、額に軽い痛みが走った。驚いて額を抑えて顔をあげると、そこには私と目線の合うように膝を折ったユーマの顔が。
「さっきコウも言っただろ、兄貴が妹を助けんのは当たり前だ。んな湿っぽい顔すんな、うぜえ」
ぽかんとしていると、アズサがユーマの後を継ぐように小さく頷く。
「うん・・・俺は、メイさんに謝って欲しくない・・・」
「そうそう!アズサくんの言う通りだよ!」
「で、ですが・・・」
彼らとの距離感に未だに戸惑う。たとえ元人間だとしても、彼らはヴァンパイアで、私は存在してはならない半端者で。
私は誰にも迷惑をかけてはいけないのに。
「おい、メイ。言っておくが、俺たちはお前のことを迷惑などと思っていないからな」
「っ」
ルキの心を読んだかのような発言に、息を止めた。
「可愛い妹に、面倒くさーい、なんて思うわけないでしょ?」
「うん・・・俺、一番弟で、自分より下の兄弟っていなかったから・・・・・・メイさんが妹になってくれて・・・・・・嬉しいんだ・・・。だから・・・そんなこと思わないよ・・・」
「アズサさま・・・」
なんてもったいない言葉なんだろう。・・・私でも、誰かを喜ばせることができるのだろうか。
「・・・ま、アズサが言ってることには同感だぜ。だから、お前が言うべきことは申し訳ありませんじゃなくてだな」
ユーマはそれ以降口を濁してしまう。私が言うべきこととはなんなのだろうか。謝罪以外に、何も思いつかない。
「お前が思ったことを口に出せばいいんだ」
ルキが私を励ますように肩に手を置いてくれた。その手のひらも、瞳も、私にくれるものはとても温かくて、優しい。
無神兄弟の温かな態度に背中を押され、私はおずおずと口を開いた。・・・謝罪ではなく、私の思ったことを。
「あの・・・皆さまに助けていただいて、とても・・・とても嬉しかったです。妹と言って下さるのも、恐れ多くて、でも、嬉しくて。本当に・・・ありがとうございます」
ヴァンパイアという、私のコンプレックスの権化とも言えるような存在に本心を告げる。慣れない行為になんどもつっかえそうになったが、彼らは最後まで聞いてくれた。
「うん、100点満点!」
「ふふ・・・どう、いたしまして・・・」
「ま、当然のことだからな」
「ああ・・・そういうことだ」
そして、まるで私を受け入れてくれているような、居場所を与えてくれるような、それはあまやかな笑顔を返してくれたのだった。