長編・私は貴方の妹です!

□招待状
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夕食後、個別にレイジに呼び出された。

「今度の舞踏会に、貴女も出席されるそうですね」

「はい」

彼は彼で私と同じように招待状を受け取ったのだろう、どこかしら刺々しい響きを含む言い方だった。ぴりぴりとした雰囲気を感じ、つい怖気づいてしまう。

「父上がどのようなお考えなのかはわかりませんが・・・くれぐれも今回のことで調子に乗らないように。貴女は下賎な種族なのですよ、間違っても逆巻の名を汚すようなことは許しませんからね」

「はい、わかっています」

レイジの厳しい口調にひたすらうつむいた。内容に瑣末な差さえあれど、言われ慣れていることだ。下賎な種族。身の程を弁えろ。

「貴女は私たちの餌と同じ血を持っている。最近の貴女は、少しそれを忘れているように見えますが」

確かにレイジの言う通り最近は少し嬉しいことが多くて、浮ついた気分になることもあるかもしれない。が、それでも私がどんな存在なのか、決して忘れたことなどないつもりだった。

しかし苛ついているレイジに歯向かうようなことを言えば、余計に怒らせるに決まっている。結局私は黙って俯いていることしかできなかった。

「聞いているのですか」

レイジが少しだけ声を荒げ、私の肩を強くつかんだ。

「っ!?」

痛みと驚きにバランスを崩すと、そのままの勢いで床に転がされた。レイジはそうやって無様に転んだ私を冷たく見下ろしている。

「私は貴女の存在が許せないのですよ。下等なハーフヴァンパイアが逆巻の名を語るなど・・・しかもそれが私の妹だなどと・・・認めたくないのです」

レイジは逆巻の名に対して、並々ならぬ誇りを持っているらしい。彼にとっては、私の存在自体がそれを汚しているように思えてならないのだろう。
レイジは私の胸ぐらを容赦なく掴みあげると、そのまま私の首に唇を寄せた。

「ほら、こんな風に、貴女は私にこうも簡単に食らわれ、蹂躙される立場にあるというのに」

首元で囁かれ、冷やりとした吐息を首に感じる。そして抵抗する間もなく、牙を差し込まれた。

「やっ・・・!」

「黙っていなさい。先ほど身の程を弁えろと言ったばかりでしょう」

多くのヴァンパイアに同じ言葉を言われてきたが、実の兄にその言葉を向けられている事実は、より鋭く私を抉った。
私はレイジの言葉に従い、ただ身を硬くし、必死に声を押し殺すことしかできなかった。自分の命である血液が、兄に無理矢理に搾取されていくのを感じながら・・・。
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