長編・私は貴方の妹です!

□抗えない
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私が従順に頷くと、レイジは一言よろしいとだけ言って、後はもう何も言わずに食事に戻った。
ユイが心配そうに私を見てくれたので、大丈夫という意味をこめてアイコンタクトを送る。
いつまでも食べないでいるわけにはいかないので、私もレイジに倣って、料理を頂くことにした。



〜自室〜

晩餐会が終わり、私は自分の部屋に戻ってきた。あと数時間したら陽が昇り始めるだろう。
ヴァンパイアにとっての睡眠時間である。
人間とヴァンパイアのハーフである私だが、今までヴァンパイアと共に生きてきたので、日常生活はほぼヴァンパイアと同じ。そろそろ眠りにつく時間だ。
というわけで今日一日の過度な緊張もあり、部屋に戻ってきた私は強烈な睡魔に襲われていた。

「くぁ・・・」

思わずあくびが出る。
お父様への報告など、しなければならないことはいくつかあったが、今日はもうさっさと眠ることにした。
どのみち数日間は警戒されて、使い魔を使うこともままならないだろうし。

私は部屋に備え付けてあるシャワーを浴びて、いそいそとベッドに潜った。
使用人の子として育てられていた頃とは段違いに質のいいベッドである。
私は心地よいベッドの感触と急激な眠気に引きずり込まれるまま、深い眠りに落ちた。


・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・。


・・・ふと、微かな違和感に目を覚ました。
しかしその時には、もう遅かったのだ。

「!!」

何者かがベッドの上に乗り上げ、私にのしかかってきた。抵抗しようと体をよじるが、恐ろしい力で的確に押さえ込まれ、動くことがかなわない。
せめて誰なのか把握しようとするが、人間の血が半分入っている私はヴァンパイアと比べ夜目がきかず、ぼんやりとした人影しか見ることができなかった。

(・・・っ、だれ・・・っ!?)

恐らく兄たちの誰かなのだろうが、そこまでしかわからない。
混乱と恐怖の中、それでも逃げ出そうと必死になる。
すると。

「おい、抵抗すんな無表情」

「!」

影が喋った。
少々苛立ちを含んだ声。
この声、そして私のことを無表情と呼ぶのは・・・。

「アヤト・・・お兄さま・・・なの?」

恐る恐る名を呼ぶと、今度は馬鹿にした笑いが返ってきた。

「へえ、見えねえのか。そりゃそうだよな、闇ん中じゃ何も見えねえニンゲンの血が入ってんだもんな」

そう聞こえた直後、部屋の電気がパチンとついた。ヴァンパイアの力を使ってつけたのだろう。

「おらよ、これで見えるか?お前の上に乗っかってる俺がよ」

急な明かりに目を細めるが、光に慣れて見てみると、そこにいたのはやはりアヤトだった。
彼は私の上で、嗜虐的な笑みに唇を歪ませている。

「・・・どうして」

真っ先に湧いた疑問をぶつけてみる。
私は彼に悪感情を持たれるようなことをしていないはずだ。襲われる理由がわからない。
それとも、私がハーフヴァンパイアだからだろうか?その理由で憎まれた経験は幾度もあるから、心当たりがないではなかったが。
しかしアヤトの答えは、似て非なるものだった。

「んなもん決まってんだろ。・・・ハーフヴァンパイアであるお前の血・・・どんな味がすんのか、この俺様が確かめてやるよ」
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