長編・私は貴方の妹です!
□妹
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その場に重い沈黙が降りる。
私にこれ以上話すことはなく、この耐え難い沈黙を打破することは不可能だった。
その中でただ一人、ライトだけがにこにこと余裕の表情を見せている。
「・・・ら、ライトくん?どうしてそんなに嬉しそうなの?」
彼女もこの沈黙に耐えられなかったのだろう、それまで口を閉じていたユイが躊躇いがちにライトに尋ねた。
「ん?だってさ、僕に妹ができたんだよ?い・も・う・と。んふ、なんていい響きなんだろう・・・僕妹ってずっと欲しかったんだよねえ」
「!」
(この人は、たとえその妹がハーフヴァンパイアだとしても、喜んでくれるの・・・?)
ちいさな衝撃が走った直後。
「血の繋がった女のコと、なんて背徳感でぞくぞくしちゃうよ・・・っ。んふ、こればっかりは手近なビッチちゃんで済ませるわけにはいかないからね」
突如ライトの這うような視線が私を不快にさせた。この男は私を、ハーフヴァンパイア以前に、性の対象として見ているのだ。
ハーフヴァンパイアというだけで酷い偏見を持たれるのは大嫌いだけれど、だからといってそういう目で見られるのもなんだか複雑だった。
「ライト、事はそう簡単な事態ではないのですよ」
「えー?なんでさ、僕たちに実の妹がいた、しかもその妹はこんなにも可愛い。それだけで十分じゃない」
いつの間にかライトが近くまで迫ってきていて、ちゅっと頬に口づけをされる。
「妹ちゃん?これから、色んなコト、しようね?」
「っ!」
慌ててライトから距離をとろうとした瞬間。
「・・・ねえライト。このこは僕の妹でもあるんだから、あんまり独り占めしないでください。僕もこのこに興味あります・・・」
ライトの囁きに身を竦ませていると、カナトが私の腕をぐいと引いた。
「ヴァンパイアと人間のハーフ・・・。聞いたことはありましたけど、見たのは初めてです・・・・・・どんな味がするのかな・・・ん」
「っ・・・やめてください・・・」
続けざまにぺろりと耳を舐められるも、逃げ道はなく、私は声を震わせるしかなかった。
その光景を見かねたのか、シュウが気だるげに声を上げる。
「・・・おい、間違って殺すなよ。親父がキレるぞ」
「このこ、そんなに簡単に死ぬんですか?」
「ハーフヴァンパイアは世界でも例が少ないですから、確実なことはわかっていません。ですから気をつけた方がいいでしょう・・・父上が殺すなとおっしゃったのであれば」
「・・・てことだ」
ふうん、とカナトが気のない返事をし、興味深げにわたしを見つめる。
「君がヴァンパイアとどれだけ違っていて、どれだけ同じなのか・・・試してみたいけど、それはまた今度ですね」
にっこりと微笑まれるが、その瞳は狂気の光を灯していた。まるで実験対象のモルモットでも見るような目で、彼は私を見る。
「・・・さあ、ここでずっとこうしていても仕方ありません。まだ色々と聞きたいこともありますが・・・メイ」
「・・・はい」
「使い魔に部屋を用意させましたから行きなさい。余計なことはせず、大人しくしているように。今日はちょうど兄弟が集まる晩餐会ですから、その時にまた呼びます」
「・・・わかりました」
私の突然すぎる登場によって、兄弟同士相談することもあるのだろう。ヴァンパイア界において、私は異端中の異端、タブー中のタブー。
そう簡単には受け入れられないだろう。いや、最後まで受け入れられないことだって十分にありえるけれど。
私はレイジの指示に従って、大人しく使い魔の後についていった。