長編・私は貴方の妹です!

□招待状
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学校からの帰宅後。夕食に誘われ、私はユイと初めて二人きりで食事を共にすることになった。

「・・・これ、全部ユイが作ったの?」

キッチンには、既に美味しそうに湯気を立てる料理の数々が並んでいた。

「うん!メイが帰ってくるの遅いから、先に作って待ってたの。レイジさんほど上手くないんだけど・・・あとは盛り付けるだけだよ」

感動、その一言に尽きた。今まで私のために食事を作ってくれる人などいなかったからだ。

「ありがとう、ユイ」

心からそう言うと、ユイも嬉しそうに頷いてくれた。


二人で料理を盛り付けて、長テーブルの端に座る。だだっ広い逆巻邸のダイニングルームに大きな長テーブルは、二人きりの食事には大き過ぎる感じがする。

「じゃあ、いただきます」

「いただきます」

ユイの声に私も重ねるように手を合わせた。


「・・・メイ、結構食べるんだね・・・」

ユイが信じられない面持ちでそう言ったのは、私が五杯目のビーフシチューを平らげ、六杯目のおかわりに行くところだった。

「あ、ごめん」

「えっ、ううん!謝ることじゃないんだよ!ただ単純にすごいなあって思っただけで!」

「・・・ならよかった」

「・・・ねえ、ちょっと疑問に思ったんだけど・・・メイも普通の食事は栄養にならないの?」

ヴァンパイアは血から栄養を摂るので、人間のように食事をする必要はない。しかし、ハーフヴァンパイアである私は彼らとはまた別である。

「なるよ。ただし、栄養の吸収効率が悪いから、たくさん食べなくてはいけないんだけど」

「ああ、だからそんなに沢山食べるんだ!納得」

「ユイが作ってくれた料理なのに、沢山食べちゃってごめんなさい。今度は私が作るよ」

「ほんとに!やったぁ、楽しみ。あ、じゃあ今度は一緒に作ろうか」

「ええ」

ユイの提案もとても嬉しかったが、それより私は、私のヴァンパイアの部分を尋ねられなかった事に安堵していた。私の半分は、ユイの命を脅かす生き物なのだから。

そうしてどうでもいい話をしながら、楽しく食事をしていた時だった。ぱたぱたと軽い羽音が耳をつく。

「!・・・使い魔」

ヴァンパイアの使い魔であるコウモリが、足に何かをぶら下げて私の元へ飛んできた。

「手紙?」

「・・・そうみたい」

ユイが興味深げにコウモリを見ている。私は使い魔から手紙を受け取ると、そのまま使い魔が帰るのを見送った。
手元の手紙を見ると、逆巻の紋章が描かれている封蝋がしてあった。十中八九お父様・・・カールハインツからの手紙だろう。ユイに確認を取ってから、少し緊張して封を開ける。

「・・・舞踏会?」

中から出てきたそれは、舞踏会への招待状だった。
そこにはカールハインツの城で舞踏会を開催する旨が書かれていて、私も含め、逆巻兄弟は全員強制参加。他にも魔界の名だたる貴族たちが参加する催し物のようだった。

「なんで私が・・・」

「どうしたの?メイ」

思わず呟くと、ユイから反応が返ってくる。

「・・・舞踏会への招待状。お父様から」

答えると、ユイは無邪気に顔を綻ばせた。

「へえ!楽しそう!」

「・・・多分、楽しくないよ。行ったことないからわからないけど」

「え?ないの?」

ユイの問いに、無言で頷く。私は今まで使用人の子供として育てられた身だ。舞踏会のような催し物にも、一度も参加したことはなかった。それを今になって。

「・・・お父様、何を考えていらっしゃるのだろう」

楽しかったはずの夕食の席に、暗い不安の影がさした。
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