長編・私は貴方の妹です!
□暖かさ
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翌日。レイジから制服を受け取った私は、兄弟と共に学校へのリムジンに乗り込んでいた。車内の狭い空間に兄弟全員がいるプレッシャーはすごかった。
アヤトの方をちらりと見やるが、アヤトは昨日の出来事などすっかり忘れてしまったように退屈そうにしている。
「あーっ、妹ちゃんに噛み跡はっけーん!」
「!?」
隣に座っていたライトが、急に私の襟をぐっと下げた。
「なっ」
「もー、先越すなんて酷いよー。誰ー、コレ?」
「ああ?俺様に決まってんだろ」
ライトの不満そうな声に、アヤトが自慢げに答える。私は吸血されることが当然といった空気に、強い屈辱を感じた。
「ずるいですよアヤト。僕だって彼女の血が飲みたい」
そう言ってカナトが私の腕を掴んで引っ張った。
「っ!やめてくださ・・・っ」
必死に抵抗するも、やはり純血のヴァンパイアには敵わない。体勢を崩したところを抱きとめられ、そのまま首筋に舌を這わせられた。
「うん・・・やっぱり不思議な匂い・・・。いただきます・・・」
「あ・・・っ」
前置きもなく、首筋に痛みが走った。身を捩るが、余計に痛みが増し、更に動けなくなる。
「あーっ、カナトくんまで!もう・・・」
そう言うライトが、痛みに硬直する私の腕をとったかと思うと、袖をまくり、手首をむきだしにした。まさか。
「僕も、吸っちゃお・・・」
首筋に続く、手首への痛み。
「い、ゃ・・・っ!」
最初は他の兄弟たちを意識していたが、痛みと混乱にそれすらわからなくなってきた。アヤトとレイジの声がなければ、私はそのまま意識を失っていたかもしれない。
「おい、そいつは俺のだぞ!」
「そういう問題ではありません、吸血行為は自分の部屋でなさい!」
その言葉に、二人は渋々と言った様子で私を離す。力を失った私をふらつきながらも抱きとめてくれたのは、ユイだった。
「メイっ!大丈夫!?」
「へえ、面白い味だね。何と言うか、味わい深いってやつ?」
「そうですね、ユイさんのはすぐに美味しいって思いますけど、彼女のは少しずつ浸透してきて、なんだか足りない気分にさせられます」
二人の狂気じみた視線を感じて、私は身を震わせる。
「まったく・・・少しは自制なさい。ほら、着きますよ」
リムジンはいつの間にか嶺帝学院高校の正門のそばで止まっていた。