長編・私は貴方の妹です!

□妹
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用意されていた私の部屋は、シンプルで機能的そうな部屋だった。特に何か飾りがあるというわけでもなく、タンスやドレッサー、ベッドなど、必要最低限の家具が揃っている感じ。
私はぼふっとベッドに突っ伏した。
そのままはーっと大きなため息をつく、

(緊張した・・・)

父であるカールハインツを除けば、ヴァンパイア最強とうたわれる逆巻兄弟の前である。しかも自分は卑しい存在で、実の妹。
下手を打てば、勢いに任せて殺されてしまうのではないかと思っていた。
だがこれでとりあえず、しばらくは命を繋げそうである。

と。

コンコン。

穏やかなノックの音が響いた。
私は瞬時に身を固くし、平静を装って返事をする。

「はい」

「あの、ユイです。ちょっとお話したいなって。いいですか?」

(!)

その声を聞き、私はほっとしてすぐにドアを開けた。

「どうぞ」

「あ、ありがとうございます」

ユイは私の承諾を得て遠慮がちに入ってきた。
机に備え付けてある椅子を勧めると素直に腰をおろし、他に椅子がないので私はベッドに腰掛ける。

「ごめんなさい、いきなりおしかけちゃって」

「別に平気。それより、お兄さまたちは良かったの」

「追い出されちゃったんです、邪魔だって」

そう言って、ユイは恥ずかしそうに笑う。
その様子はなんとなくいたましかった。

「・・・」

「・・・あの、メイさんも、この家に住むんですよね?」

頷く。

「それなら、同じ同居人だし、仲良くなれたらなって思ったんです。えっと、女の子私以外にいないし」

「なか、よく・・・?」

「はい。あの・・・駄目ですか?」

ユイは私を不安げに見つめる。
しかし私は信じられない気持ちでいっぱいだった。

「私と、仲良くしたいの?ほんとうに?」

「?はい、もちろんです」

「私はヴァンパイアの血を引いてる。貴方達人間に危害を加える生き物なのに・・・?」

「そんなの今更ですよ。アヤトくんたちで慣れちゃいました!それにメイさん、優しそうだし」

「・・・っ」

・・・この子は、私と仲良くしたいと言ってくれたのか。
ヴァンパイアのように蔑みもせず、人間のように恐れもせず・・・。
仲良くなりたい、と。
そう思うと、目頭がじんわりと熱くなるのを止めることができなくなって。

「えっ、メイさん!?」

「なんでもない」

「でも、泣いて、」

「なんでもない。ユイ・・・もし、ユイさえいいのなら、その・・・私も仲良くなりたい」

恐る恐るそう告げると、ユイの顔がぱっと輝いた。

「はいっ、勿論です!」
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