【EXO BOOK】


□戻れない出会い
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【 ルハン side 】


1人で大学の食堂でお昼ご飯を食べていると、同級生のタオがやってきた。



「あ!ルハンー!」



タオは、クールな顔に似合わないかわいいしぐさで、僕を指さした。



「ここで食べてもいい?
友達もいいかな?」



タオは1人友達を連れていた。




「うん、いいよ。」




僕は隣の椅子の上に置いていた荷物をどける。




「はじめまして、レイです。」




涼しげな顔をした線の細い男の人がぺこりと頭を下げて隣に座った。











大人しい人だな…。




それがレイの最初の印象だった。





タオと僕が話していても、レイは口を挟むことなく静かに微笑みながら話を聞いていた。









「レイは休みの日は何してるの?」






あまりに何も話さないレイに、気を遣って話しかけてみる。






「図書館で勉強してることが多いよ。」




静かにゆっくりとレイは答えた。





「へぇー真面目なんだね。
趣味とかはないの?」




「…趣味と呼べるものは特にないよ…。」



「そっか…。」










初対面の僕にあんまり自分のこと話したくないのかもしれない。



なんとなくそれ以降レイの話を聞きづらくなり、会話は途切れてしまった。



僕はレイに話しかけるのはやめて、そのままタオと話し続けた。











数日後の月曜日の英語の授業。





お昼からの授業って眠いんだよなー。



そんなことを考えながら、教科書をペラペラめくっていると






「ルハン。
ここ、いいかな?」


声が聞こえて顔を上げると、そこにはレイがいた。



「う、うん。」



レイは隣にすっと座ると、



「今まで同じ授業だったなんて気付かなかったね。」



首を傾けながら、にっこり微笑んだ。



こないだはそっけなかったのに、打って変わって人懐っこいレイの行動に僕は驚いていた。





授業中、隣のレイをちらっと見る。


レイは一切僕のほうを見ずに真剣に授業を聞いている。



こないだは気付かなかったけど、レイって綺麗な顔してるんだな。



レイの綺麗な鼻筋や小さい口、僕は新しい発見をしたように、レイのことを飽きることなく見つめていた。










気が付くと、授業はいつのまにか終わっていた。




レイは荷物をまとめると、すっと立ち上がって僕に背中を向けた。






あ…もう帰っちゃうんだ…。







そう思った瞬間、








「ね、このあとヒマじゃない?」





レイは振り返ると、ふふっと微笑んで人懐っこい笑顔を見せた。








「僕、ルハンと一緒に行きたい店があるんだ。」











僕はレイに言われるままに、レイと一緒に大学から少し離れたカフェに来ていた。






落ち着いた照明に、ウッド素材をメインにしたインテリア。



壁際の本棚にはアンティークの小物や洋書が並んでいる。







「おしゃれなカフェだね。」



周りを見渡しながら素直な感想を口にすると、



「でしょ?」


ミルクティーのカップを片手にレイは微笑む。




店内には静かにジャズが流れていて、他にお客さんは誰もいない。






「僕が地方からこっちに出てきて初めて見つけたお店」




レイはえくぼを作って僕の目をじっと見る。











「すごく気に入ってるお店だから、誰にも教えたことないんだ。」








レイは伏し目がちにそう言った。












このとき僕はレイの言葉にもう囚われていた。
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