・小説・

□嘘の数枚
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「帽子屋よくきたの」

「・・・・私だけを呼ぶなど
どうされたんですかバカ毛公」

「何どおってことない
昔の資料や貴族の遺品の整理を
していたら
面白い物が出てきたのでなお前を
揺すってみようかと思いっただけじゃ」

「どうぞ揺すってみてくだサイ
あなたが興味ありそうな私の過去はもうご存知でしょ」

「それとは別じゃ
これから見せるものは我の
欲求を満たすものではないが
帽子屋に見せることにより
我を満たしてくれるだろう」

「・・・・」

「50数年前の物じゃ」

「・・・」

「気になるじゃろ」

「・・・・」

「数枚の写真なんじゃがな
お前に判別出来るよう桁外れな
拡大をしてやったわ」

「シンクレアの写真ですか・・・」

「そんなところじゃな
持ってくるのは骨が折れるからの
部屋に来い」

「えぇ」

バルマに仕える人間でも知る人は
少ないであろう
隠し部屋に案内された

「・・・・何ですかこの部屋は」

「お前を通すのは初めてじゃったの
我の第二の書斎と言ったところか」

「そうですか
ところで写真とは?」

当たりを見回しても
壁は壁 そこに何かあるなというものは
椅子や机 本棚 本の山なんだろう

「そうせくでない
我がまだ若い時 シンクレアの後地に行ったことがある」

「・・・そんなことはどうでもいい」

「聞いてくれても良いじゃろ・・・
シンクレア邸は荒れてしまっていた
あんな後じゃ一時期立ち入り禁止での
我も足を踏み入れられなかった」

「・・・・そうですか」

「一般の人など恐れて近づきもしなかった
警備もいなくなっての
時代から忘れられ始め
シンクレア邸の解体が決まった
その前に歴史価値のある書物が欲しくての
忍び込んだのじゃ
金品は物取りに取られてなかったがの
書物の価値を知らんのか何冊かいい物が残っておった
邸宅の設計図に不可解なとこを見つけ
行って見たところ案の定
空間があった」

「・・・・」

「心当たりはあるか」

「えぇ いくつか」

「・・・・いくつもあったのか
見損ねたの後悔してきおった」

「バルマ邸にもこの様な場所が
まだあるのでしょ」

「資料部屋は厳重にしておるが」

「似たようなものです」

「なら尚更じゃの」

「あぁ そうですね」
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