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□雨の夜
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雨の夜。
時刻は既に午前2時。
激しい雨の音は、アパートの階段を上がって来る足音すら消す。
玄関の開く音で翔が帰って来たことに気付いた。
暗い部屋の中で、私が起きていた事に気付いた翔は少しビクッとして言った。
「ただいま。起きてたんだ、名無しさんちゃん。」
「うん、遅かったね。どこ行ってたの?」
「ちょっと豊と呑みに行ってたんだ。ネタ作りに盛り上がってこんな時間になっちゃった」
と、いつもの笑顔。
「濡れてるからシャワー浴びてくるね」
そそくさとバスルームに消えていった。
これは女の勘。
長く一緒に暮らしてると、何か怪しいことくらいすぐにわかる。
気付くと私は豊に電話をかけていた。
「おー名無しさん、こんな時間にどうしたよ。」
「豊、今どうしてるの?」
「俺?一人でビール飲んでるけど・・・?」
「翔と一緒には居なかった?」
「翔?今日は俺先に帰ったから一緒には居ねーよ?」
「そう・・・わかった、ありがとね」
やっぱり。
翔は嘘つくのが死ぬほど下手くそ。
なんでこんなにわかりやすい嘘をつくの。
豊と一緒にいたかどうかなんて、すぐにわかるのに。
なんかムカつく。