30000hit企画

□私と弟 〜花宮真の場合〜
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私の弟はかなりの甘えただ。


これは誰かに言うと到底信じては貰えないんだけど、事実なんだよね。


私の弟…花宮真はお外と家(っていっても私の前だけ)ではかなり態度が違った。


外では成績優秀、文武両道で大人びた何でも出来る凄い子。


部活のバスケは少々やんちゃ(やり過ぎな気もするが)だけど、先生、女子からも好かれる人気者だ。


でも、一度家に帰ればそんな優等生で大人びた姿はどこに忘れてきたと言いたくなる位の甘えた弟になるのだった。




キッチンでいそいそと夕食作りを始めている。


私と真は、二人暮らしをしていた。


私が大学に近いとこをって一人暮らししようとしたら真が付いてきたって感じでなったんだけど。


で、私のが帰りが早いから家事関係は毎日私がやってるんだよね。

なんか気分は主婦だった。


ピピッと軽快なキッチンタイマーの音が響いたのでオーブンを開ける。


ふわりと香るチーズの焦げた香りに、満足げに笑ってグラタンを取り出した。


できた皿をテーブルに並べ終えれば、タイミング良く開いた玄関の鍵の音。


タイミングいいなぁ。


笑いながら迎えれば、噂の弟が帰ってきたようだった。


『おかえり。』


「…ただいま。」


真のスクールバックを受け取って、練習着を洗濯機に突っ込んだ。


「今日、グラタン?」


『うん、そう。
グラタンがメインだよ。』


「腹減った。」


『手を洗って早くおい―…真?』


先にキッチンに行こうとすれば、真に後ろから抱き締められた。


あぁ…背、伸びたなぁ。
なんて呑気に思ってされるがままにした。


もはや慣れすぎて違和感がないんですよ、はい。


「疲れた。」


そう言って首もとを甘咬みされる。


くすぐったさに思わず身をよじれば、逃がさないとばかりに腕の力が強くなった。


『はいはい、お疲れ様。
ご飯が冷めるんだから早く手を洗っちゃいなさい。』


「もうちょっと。」


『却下。』


真の提案を却下して無理矢理引き剥がす。


力の差があるから毎回一苦労なんだよね。


引き剥がせば途端に眉間にシワがよる真。


あー…イケメンが台無し。
睨まれるとクソ怖いけど、剥れたってダメだい。


『リビングで待ってるから。』


そう自分で言ったのにも関わらず洗面所のドアの前…廊下で待ってる私はかなり弟に甘い。


と、言うより昔から弟に弱い。


2つ離れているからなのか、昔から真が可愛くて仕方がなかった。


だから散々甘やかし過ぎた結果、甘えん坊になったのだろうかと最近反省している。


まぁ、なんやかんやそう言っても甘やかしちゃうんだよね。


カチャリと開いたドア。


出てきた真は驚いた顔をせず、むしろ待ってて当たり前みたいな顔だった。


ムカつくなぁ…
またなきゃ良かったかしら。


「先に行くんじゃねーの?」


唇が綺麗な弧を描く。
それが無駄に絵になる顔で更にムカついた。


イケメン爆発しろ。


『お姉ちゃんは優しいからわざわざ弟を待ってたんですー』


「ふはっ…姉なんてどこにいんだか。」


『目の前にいるでしょ!!』


「ちっせぇ姉なんて知らねーよ。」


『真より私が大きかったら怖いよ!
そう言う事ばっかり言うと、カカオ100%チョコのガトーショコラあげないぞ。』


「くんねーの?」


『Σうっ…』


シューンと落ち込んで、捨てられた子犬のような目を向けられた。


私はこの目に…勝てない。


結局私が折れて、真の食事が終わったあとに出してあげるハメになった。


美味しそうに食べる顔見たら文句も言えない、そう思って微かにため息をついた。


でも口許は笑ってる。
そう自覚をしながら真を見てた。


食事を終えれば、真はお風呂にはいる。
その間に私はリビングでレポートを書いていた。


無駄にレポート課題が多すぎる。
教授まぢムカつくなぁ。


禿げて…げふんっ。
テカってる癖に、生意気だ。


終わらない課題に悪態をつきながら確実に終わらせていった。


どれだけ集中していたのだろうか。
いつの間にか真が隣に立ってた。


『もう出たの?』


「とっくにな。
ほら。」


コトンッとホットミルクを置いてくれた。


相変わらず優しいなぁ。


『ありがとう♪
甘いね。』


「糖分は疲れにいいんだよ。」


照れたように頬を染めて、目をそらす真。


やはり可愛くて仕方がない。


『真、先寝てていいよ?』


「んー…」


返事するくせに、後ろに座って抱き締めてくる真。


これは、先に寝る気ないな。
苦笑いしながらまたレポートに取りかかった。


時おり頭を肩にグリグリ押し付けてくるのがくすぐったい。
完全なる妨害じゃん。


『真、髪濡れてない?』


「…ドライヤーで乾かしてない。」


『風邪引くよ?』


「んー…」


私から離そうと色々提案してみても、真は一向に離れなかった。


諦めたようにため息をついて、私は手からシャーペンを離した。


課題はなんとかなるべ。
可愛い弟を放置して課題をやる気力は私には最早無かった。


『髪乾かして寝ようか。』


「は?
課題は?」


『なんとかなるよ。』


駄目だろ、とか優等生らしいお小言を漏らす癖に手はちゃっかり私の裾をつかんでんだよね。


可愛い弟に私は一生勝てないな。
それでもいいと思う私は相当なブラコンだ。


笑って、真の髪を乾かして寝る支度をする。


『おやすみ、真。』


「おやすみ…晃。」


二人仲良く寝床について、深い眠りに身を委ねた。


花宮家の姉弟はお互いにシスコンブラコンの仲良しさんなのであった。


end

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