庶民から執事へ

□プロローグ
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「今日からここが優奈のお家よ」

「大きい…」
小学3年生の少女《優奈》は
母の《鈴音》の言葉でいかにも高級そうな車の窓から外を覗く
そこにそびえ立つのは大きく綺麗な屋敷


「到着致しました」

ガチャ


運転手がそう伝えると外からドアが開けられる


「さあ降りて新しい家に入ろう優奈」
優しい笑顔で優奈に微笑むのは先日、優奈の父親になったばかりの《源次郎》


父親の言葉に頷くと優奈はゆっくりと車から降り大きな屋敷の前に佇み
新しい家だと言われるその屋敷を見上げる
優奈の後に母が車から降りて優奈の横に立つ
それに気がつくと優奈は母の手を握り不安そうな顔で見上げる
しかし母はニッコリと優奈に笑いかけ優奈の手を握り返した
そして手を引かれ屋敷への入り口大きな扉の前に足を動かす


ギー


扉の前に行くとゆっくりと扉が開いていく


『 お帰りなさいませ旦那様、奥様、優奈お嬢様 』


扉が開くとその言葉が聞こえると同時に
扉の両脇に使用人たちが頭を下げ一列に並んでいた


「っ!!」
優奈は初めて見る人と光景、初めての呼び名に恐くなり母の後ろに隠れしがみつく


「あらあら
人見知りね優奈は」

「そんなに怖がることはないさ
みな良い奴ばかりだ」
2人がそう言うも優奈は母のしがみついたまま離れない


「あっやっと来たな!!」
屋敷の扉を開けて正面にある大きな階段の上から元気な声がと2人分の足音が聞こえた


「遅かったね」

「すまなかったな」

「ただいま翔くん、涼くん」
降りてきたのは源次郎と同じくして
先日優奈の新しい兄となった双子の翔と涼
見知らぬ人ばかりだった中に少し見知った2人が出てきて優奈は顔を母の後ろから出す


「何隠れてるんだよ優奈
帰ってきたんだから早く中に入れよ」

「優奈お帰り」
優奈と目が会うと2人は優奈に言葉を投げかけた
しかし優奈は母から離れない


「ほら優奈お帰りだって
優奈は何て言うの?」
鈴音は後ろに隠れたままの優奈に優しく問いかける
その優しい笑顔を見上げてその隣に居る父の顔を見る
そして最後に中に居る2人を見る
新しい家族全員の顔を見た後優奈はゆっくりと口を開く


「…ただいま」
小さく言い放ったその言葉
その言葉から優奈の新しい生活が始まった
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