文
□白雪姫はきみですか?
1ページ/1ページ
「『―・・・そして、お姫様は王子様とずっと幸せに暮らしました。』なんて、今聞くととんでもない話だよね。」
絵本を閉じて問いかけると梓はそうだね、と笑った。手元にあるのは白雪姫で、本屋で表紙の絵が可愛くて買ったもの。久しぶりに見た絵本が子供のころを思い出させてくれた。昔みたいに梓と2人で布団に入って俺が読んで、そんなことをやってるうちに梓も眠くなってきてしまったようで目がうつろになっている。梓のふわふわな髪をなでてやると気持ちよさそうに目を細めた。もう遅いからこのまま寝てしまおう、そう思った時梓の手が俺のほうへ伸びてきた。
「まだ寝たくない。」
そういうと俺の頬をなでた。今にも寝てしまいそうな甘い声でそんなことを言う。ファンの子もこんな梓知らないんだろうな、ぜってー見せてやんないけど。
「梓って白雪姫みたい。」
「…え?」
「だって白くて綺麗な肌で真っ黒の髪で血みたいに真っ赤な唇でかわいくて、白雪姫だね。」
っていうと梓はふふっと笑う。
「白雪姫は王子様のキスで起きるんでしょ?」
「それ誘ってる?」
「それ以外ないでしょ?」
梓は白くて綺麗な白雪姫、そして俺を惑わす毒りんご。一口かじってしまうだけで梓でいっぱいになって、もう戻れなくなる。俺は我慢できなくなって白雪姫の真っ白な首に吸いついた悪い王子様。そんな俺でも愛してくれますか?
愛しています。王子様。