リュウガ×シン side
□誘惑
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酔った勢いと言うには、余りにも記憶がはっきりし過ぎている。
満月の夜の、甲板の宴で。
例によって酔い潰れたハヤテとトワをソウシとナギが船室に連れて行って。
甲板には、リュウガとシンが残された。
「相変わらず酒強ぇな。お前は。」
「船長程ではありませんよ。」
いつもの会話。
細い指でグラスを傾けて、シンはククっと笑う。
その時、ふ…と交差した二人の視線。
シンは、グラスに残ったワインを静かに空けると、その形の良い薄い唇から思いもよらない言葉を平然と吐き出した。
「船長…。」
口角を僅かに上げて、リュウガを見据えるシン。
「俺と、寝てみませんか。」
「…いきなりどうした?…シン。」
そんなシンの申し出に、リュウガは狼狽える事もしない。
「別に。海賊王との夜に興味があるだけです。」
月明かりを背負いながら、伏せ目がちにワインをグラスに注ぐしなやかなシンの仕草。
ーーーシンにこんな風に誘われて、断る男はいねぇだろうな。
ーーーこいつを啼かせてみてぇ。
リュウガはニヤリと笑うと、いいぜ。と呟き、シンの手からワイングラスを取った。