dream
□第十章
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一行が辿りついた先はワシントン州のチャンス・ハーバーだった。
「ニューヨークとはまた違うな」
元親は車から見える景色を楽しんでいた。
「お前ならどこでも楽しめそうだな」
「んな事ぁねぇよ。俺ぁ久しく米と味噌が食いてぇんだ」
「はいはいお腹空いたのな」
相変わらずこの会話が続いていた。
「ここは海岸が有名らしいですよ。もしかしたら魚介のレストランでもあるかもしれません」
アイフォンでエレナは街を調べていると元親は“魚介”という言葉に目を輝かせた。
「あそこです」
エレナの指先に見えるレストランにマホーンは車を走らせた。
「いらっしゃい」
お店に入るとエレナと同い年ほどの青年に声を掛けられる。
「4人だ」
長い運転に不機嫌なマホーンが答えると青年は窓席に案内した。席からは海がよく眺められた。
「ここには観光で?」
水を持って来た青年に尋ねられエレナは頷いた。
「僕はアダム」
そう名乗る青年にエレナはその名前に驚きマホーンを見るとマホーンは頷いた。そして「へぇ」と相槌をうつと、アダムは微笑んで席を離れて行った。
「へぇ〜、あいつアンタに好意を抱いてんな」
肘で小突く元親に「やめてくださいよ」と笑ってエレナは目を背けると、アダムと目があった。
爽やかな笑顔にエレナは作られた笑みで返した。
「それより今後の計画だ」
苛ついた様子で元就は話を切り出すとマホーンは咳払いをする。
『出来過ぎた話じゃねぇか?』
小声で話すマホーンに3人は顔を近づける。
『どういうこった?』
『おかしいと思いませんでした?』
首を傾げる元親にエレナは尋ねる。
『昨日は創世記でお騒がせで、今日はアダムってか?』
呆れた様子でマホーンは声を洩らすと元就は頷いた。
『全て結びついて居るのやもしれぬ』
すると
「どうぞ」
と4人のテーブルにアダムはタイの蒸し焼きを置いた。
「俺達は頼んでねぇぞ?」
「サービスですよ。他のお客さんには内緒で」
とアダムはエレナにウインクして去っていった。
「こりゃいい。暫くここに身を置くか」
「ちょっと…」とエレナはマホーンに拒もうとするとそれが冗談だとわかり笑った。
「取り敢えず、宿を取るか」
マホーンは話しを終わらせタイを突いた。
「どうでした?」
とテーブルの皿を片づけるアダムが尋ねて来るとマホーンは上機嫌に「ここの料理は美味い。また来るよ」と答える。
するとアダムは笑みを浮かべた。
「なら今夜、ここで小さなパーティがあるのでいらしてください」
「なんのパーティだ?」
「今日は金曜ですからね」
「ああ、そうか」
既に意気投合しているマホーンとアダムを見てエレナはため息を吐いた。