dream
□第九章
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「……」
静かな部屋に元親と眠る元就の2人きりだった。
真っ暗な部屋からはニューヨークの夜景がまばゆくて切なく見える。
「…ッ」
すると元就の瞼がゆっくりと開かれ、目の前に心配した顔で自分を見つめる元親の顔が見えた。
「気が付いたか」
元親の一声で、元就は先程の出来事を思い返した。
「痛…ッ!」
酷い頭痛で頭を抑える元就に元親は水の入ったコップを渡した。
「あ奴等は…?」
尋ねられ元親は素直に全てを話した。
「そうか…」
息を吐くと元就はベッドから起き上がり、窓から夜景を眺めた。
*
2人がセントラルパーク内を駆け上げる。そして目の前にエレナの学校が見えてくる。
“急がなくては”
2人はその言葉だけを胸に足を前へと進める。
「「!」」
すると次の瞬間、凄まじい白い光に包まれたと思った刹那に熱風に包まれ2人の体は後ろへ吹き飛ばされる。
その間、エレナには何もかもがスローモーションのように見えた。
そして停まっていたトラックに背中を打ち付けた2人は、車のクラクションの音のような耳鳴りに襲われそして互いに無事を確認する。
よろめく足取りで前へ進めると2人は目を疑った。
「なん…だこれは」
ようやく意識がはっきりとしてきた2人の目の前には先程まであったはずの学校やその周辺は跡形もなくなくなり、道路やコンクリートは凹凸ができそして湖が1つ入る程の大きな穴が出来ていた。
「!」
マホーンは近づきすぎ穴へ落ちてしまいそうな所を、エレナが危機一髪に彼の腕を受け止めた。
「こんな事になるなんて…」
*
学校があった場所にはパトカーや消防車、そしてFBIの車がわんさか集まっていた。
「報告を!」
物事の把握を先決に、とFBIが傷の治療を受けているマホーンとエレナに詰め寄った。
「俺達にもわからない」
そう答えるがFBIは容赦なかった。
「では、話を当局に…」
「んな余裕ねぇんだよこっちは…!」
苛々した様子のマホーンに事情聴取していた男は唖然としていた。
「中はどうなってんだ?」
マホーンが逆に尋ねると男は「まだなんとも」と答える。
「捜査チームが全力を尽くしている」
と、そこのトップであろう肌の黒い男が付け足した。
「そうかい。俺達は帰るぞ」
マホーンはエレナの肩に手を置いてその男に話すと男は頷く。
「何かわかったら話す」
「ああ、頼んだ」
*
「おい!さっきの光りは何だったんだ!」
ホテルへ帰って来ると2人は元親の質問攻めにあっていた。
そして頭から流れる血を拭き取りながらエレナは冷静に答える。
「パンドラの箱を開けてしまったんです」
「一体どういう事だ!?」
混乱する元親にマホーンは「落ち着け」と肩を叩く。
「明日の朝には分かるそうだ。お前らが心配する必要はねぇ」
「だけどよぉ…!」
「大丈夫だ」
マホーンは強く頷くと元親はそれ以上何も言えなかった。
「面倒な事になったな」
元就はベッドに横になりながら自分の脈拍を測るエレナに声を掛けた。
「ええ…。これほどまでの失態を起こすなんて」
そう話すエレナは後悔でいっぱいだった。
「だが、あれを止めなければ沢山の者が命を落としておったはずだ」
「正統化すれば何とでも言えますよ」
「それもそうだな」
否定しない元就に少しエレナは傷ついた顔をしたが、それは彼なりの優しさだと思った。
「しかし、貴様の父上は無事であったか」
「はい。先程連絡がつきまして、既に帰宅していたそうです」
「それは幸運であったな」
「本当に…。他2名を除いては、ですが」
「全ての事に犠牲は付きものだ。我らはそう胸に抱き生きていた」
「あなたは私の想像以上に辛い思いをしてきたんですね」
すると元就はフッと笑みを浮かべ「特に西海の鬼には手を焼いている」と答えた。
「それよりも何故、あの時傍に居てくれたんですか?」
気恥ずかしそうに尋ねるエレナに元就は眉を顰める。
「貴様なら手古摺るとわかっておった」
そう答えるとエレナは「さすが」と笑った。
それからエレナは自室に戻ってベッドに腰を下ろした。
そして分厚く古い手帳を手に取り、慣れた手つきで何かを書き始めた。