dream
□第六章
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翌朝エレナの寝起きは酷かった。
そして朝食を口にしては、重い足取りで学校へと向かった。
昨日の夜、起きた事は元就もマホーンも口にしなかった。そして何も知らない元親だけは幸せそうに朝食を口にしている。
「こいつ(クロワッサン)を四国に持って帰りてぇな」
ふんわりとしたクロワッサンをこれでもかという程口に含む元親にマホーンは「お前は幸せ者だな」と口ずさむ。
「それで今日はどうする予定なんだ?」
元親が尋ねるとマホーンは肩をすくませる。
「今日はここでゆっくりしてろ。外には出るな」
「んな酷な事言わずに…なっ?」
何かを求める元親だったがマホーンは気にも留めず新聞に目を通していた。
「ちぇ…」
舌打ちをすると元親はテレビを付けた。
良くわからない株や政治について話しており、元親は退屈していた。
それはエレナも同様だった。
いつもと変わらない学校にため息を零す。そして今日はいつになく大きなため息だった。
というのも昨夜、悪夢に魘された所をマホーンにもそして元就にも見られていたことを知ったからだ。
「はぁ…」
「一分毎にため息を漏らしてるぞ」
その様子に隣に座っていたネイトが心配そうに声を掛けるとエレナはネイトを尻目に再びため息を吐く。
「なら今日は授業休んで僕とどっか遊びに行くか?」
優しいネイトの言葉にエレナは特に反応しなかった。
そして顔を洗いに女子トイレへと向かった。
ジャー、と流れる水道に目を向けエレナは只管(ひたすら)考えていた。
これからの事、彼らをどう守っていくのか、いや守れきれるのか…
(二の舞はごめんだ…)
ふうっと息を吐き鏡に映る自分を見つめると鏡越しにタッジオの姿が見えた。
「!」
驚き振り返るも女子トイレは自分しか居らず、安堵のため息を吐きもう一度鏡を見るとやはりタッジオが映り込んでいた。
『本気で守り切れると思ってる?本当は諦めかけているんだよね』
「…」
エレナはタッジオから目を背け、女子トイレを出た。しかし
『そうやっていつも逃げるんだよエレナは』
(これは幻覚だ…)
『それは強ち間違いじゃないけど、僕はエレナによって作られてる』
エレナはタッジオを振り払おうと廊下を走る。曲がり角を曲がると目の前には綺麗な顔をして微笑むタッジオが先回りして立っていた。
『逃げられないよ…何からも』
「…」
いつも見ているとでも言いそうな顔をして姿を消す。するとジリリリ…、とチャイムが鳴りエレナは廊下に飾られた時計に目を向け、そしてもう一度タッジオへ目線を送ると既にタッジオの姿はなくなっていた。
「ここにいたか」
すると背後からネイトの声が聞こえてくるとエレナは振り返った。
「どうした?顔色悪いぞ」
紳士のように振る舞うネイトはエレナの顔を覗き込み様子を伺っているとエレナは「今日は早退する」と鞄を持って学校を飛び出した。