dream
□第二章
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「着きましたよ」
気が付いたら眠っていた元就はエレナの声に目を覚ました。
長時間の移動でお尻を痛め立ち上がるのが苦痛だった。
辺りを見渡すがここも雪が降っており、先程の場所と背景が変わっていないように思える。ただ夜になり辺りが真っ暗であることしか把握できなかった。
そして、促されるまま元就と元親は大きなコンクリートの壁に囲まれた建物へ入っていく。
厳重な建物に2人は関心した。
長い廊下を歩いて行くと一つの大きな部屋に通された。
古びたアンティークが並ぶ部屋は少し不気味であったが先程の部屋と比べてまだ温かみを感じた。
「ここは?」
元親が尋ねるとエレナは「暫くここで休んでください」とだけ告げマホーンと部屋を出て行った。
2人になった部屋は沈黙が流れる。
だが元親は耐え切れず元就に声を掛けた。
「なんだか落ち着かねェな」
「長宗我部」
だが元就は遮った。
「確かに我らは停戦を結んだ。しかし馴れ合うつもりはない事ぐらい貴様にでもわかるであろう」
「つれねぇな」
間反対な性格の2人は相性がいい方ではなかった。
「でもよ、なんで俺らがこの時代に来ちまったのか少しは疑問に思うだろうよ」
元親の言葉に元就は頷いて見せた。
「あの時…」
あの時、暫く雨が降らず瀬戸内海周辺は不作に悩んでいた。停戦を望んでいた所に元親が安芸へ訪れたのだ。
元親も停戦を望んでいたことから、すんなり話しは進んだ。
そして2人は別れようとした時、あの黒づくめの男たちが襲ってきたのだった。
得体の知れない武器に難なくやられた2人は捕らわれこのような様だった。
「あ奴らが未来の者と分かれば辻褄が合う 」
「だな。だが、あいつらは俺達を助けて何の得がある」
「もし我らのような過去の人間が此方で死するとならば、其の子孫ら云わばあ奴らの存在は無となる。さすればあ奴らも命は欲しかろう」
「まぁそうだな。俺達を助ける訳はきちんとあるってわけか」
心にない笑みを浮かべ元親は俯いた。
「長宗我部」
「なんだ?」
「我ら以外にも過去の者が居る、あ奴らはそう申しておったな」
「そういやそんな事も言ってたな」
顎を抑えて元親は思い出した。すると2人は顔を合わせ頷く。
こっそり扉を開け2人は先程の廊下へ向かった。
沢山の扉が並ぶ。異様な風景に2人は少し違和感を感じつつも前を進んだ。
様々な字で書かれた名前が彫られており、恐らく自分と同じ立場の人間がここにいると元就は思った。
そして歩いていくうちに再び疑問が浮かぶ。
「あ奴等はこう言っていたな」
「ん?」
「我等のような過去の者が此方で死すればその子孫等の存在は無になる、と」
「ああ、それがどうした?」
元親は元就が何故そこに食いつくのかが疑問だった。
そして元就は扉に彫られた名前を見つめてゆっくりと話した。
「さすれば、そ奴らの存在即ち生きた証が無くなるということだ。それ故そ奴らと過ごした記憶すら消えてしまうことになるとは思わぬか」
「言われてみりゃ、そうだな」
元就は過去の者が子孫を残す前に殺されてしまえば、その子孫が存在しなかったことになると考え、例えば、共に過ごした友人であろうともその過ごした日々さえ無かったことにされてしまう。
「その者たちへの想いが断ち切れてしまうはずであるというのに何故……」
元就が言いかけた時、後ろから声が聞こえた。
「何故私達は記憶しているのか」
2人が声に驚き振り返るとそこにはエレナが立っていた。
「そういう風にプログラムされているんです」
無表情で答えるエレナに2人は彼女が奇妙な言葉を使っているというのにどういう事か理解できた。
「我々が記憶を無くせば仕事になりませんから」
そう答えるエレナは機械のようだった。
「んな事…!」
元親は何か言いかけたがエレナは片眉を上げ不機嫌そうな声をあげた。
「勝手に出歩くのは違反ですので、今後気を付けてください」
そう言い2人を先程の部屋へ連れ戻そうとした。しかし、元親はその言葉に苛立った。
「俺たちを監禁する気か!?」
「そうでもしない限り貴方は死にますから」
「一国の主を舐めやがって!」
元親は息を荒げエレナを睨みつけると元就が止めた。
「此奴の言っている事は一理ある」
「んだと!?」
思いもしない元就の言葉に元親は元就へ目を向けた。
「我らはいとも簡単にやられたことを思い出せ」
「……」
すると何も言い返せない、と元親は俯いた。
そんな2人を見てエレナは「もう良いですか?」と尋ね部屋へ戻るように促した。
3人が部屋へ戻ると既にマホーンが待っていた。不在であった部屋に苛立っているのが目に見えてわかる。
しかし、マホーンは文句は言わなかった。
「手続きは済んだ。さぁついて来い」
マホーンは2人の顔を見たかと思ったら扉から出て行った。
2人は疑問を抱き後を着いて行く。