dream
□第一章
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20xx年
移りゆく時代の中でこの世界は平和条約を結びつけ、少しずつ平和を取り戻していった。
しかし、人々が安心して暮らせられるのも束の間
反乱を試みる者が現れたのだ。
先日、降り注いだ雪により辺りは銀世界になり木々が聳(そび)え立つそこは妙に静かで不気味だった。
空もその雰囲気に合わせてか午前だというのに薄暗くカラスが数羽飛んでいるのが見える。
そんな所に、強引に引っ張られ雪道を歩く2人の男の姿があった。その足取りは重く白い襦袢を身に纏った2人は死刑囚のようだった。
1人の男は怪しげな黒ずくめの男3人に押し付けられ、凍てつく雪に膝を付く体勢になった。
もう一方の男は、木々の間に建つ四つ脚のある銀色に光る鉄の塊の前に立たされ、これ以上希望を持たないといった目つきで黒ずくめの男たちを睨んでいた。
『さぁこっちだ!』
1人の黒ずくめの男が希望をなくした男、毛利元就の腕を掴むと銀色に光るファラリスの雄牛と呼ばれたアートに近づけた。
「いい加減にしろ!」
雪に膝を付く男、即ち長宗我部元親という男は黒ずくめの集団に唾を捨てた。
「あんたらが何を知りてぇのか知らねぇが、俺たちは何も吐かねぇ!」
狼のように睨む元親だったが、男たちは怯むこともなく、鉄の塊の扉をこじ開けると元就を無理矢理入れ閉じ込めたのだ。
牡牛の四つ脚の下には木の葛が散らばっており、それを見ては元親は嫌な予感がした。
「よせ…!」
だが、黒ずくめの男はライターを手に取ると木の葛に火を付けた。
燃え上がる炎は段々に大きさを増してゆき元就を閉じ込めた鉄の塊をジワジワと温めていったのだ。
狭い鉄の塊に元就は横になるしかなく、次第に熱を帯びていく底に顔を歪ませた。
湿気が溜まり息が吸い辛くなる。そんな中で元就は逃げ口を探した。
だが、扉は外側からしか空かない仕組みになっており、逃げ道はなかった。
そして猛烈な熱気に元就の意識は次第に薄れていき、ついには元就は力尽きた。
「毛利!!」
外では微かに元就の呻き声が聞こえたがついに聞こえなくなると元親が必死に名前を叫んだ。
しかし静まり返った森に元親は希望を失いとうとう俯いた。
すると凄まじい速さで何かが男たちを貫いていく。
「!」
元親が驚き顔を上げて見ると辺りに無数の黒鉄の矢が飛び散っているのに気がつき唖然としていると目の前に2人の男女が見え、どちらも黒いライダースを着ているのが特徴だった。
すると1人の女が長い髪を揺らしながら銀色の鉄の塊まで走り、腰にぶら下がる刀を手に取ると男たちを斬り刻んでいった。
血飛沫が上がると一瞬だけスローモーションに見える。黒ずくめの男たちは怯んでいたが、体勢を立ち直すと皆顔は見えないが確かに笑っているのがわかる。
目にも見えぬ速さで黒ずくめの男たちが女に殴りかかろうとするのを女の仲間であろう男が銃を構えてぶっ放していく。
そしてその隙を見て女は鉄の扉を開けるとグッタリとする元就を抱き上げた。
一体何が起きているのか理解できていない元親の腕にキツく結ばれた縄を1人の中年の男が解いた。
「あんたら…一体…」
問いかけると男は口角を上げて笑うだけで答えなかった。
そして元親は自由になると元就を抱えた女の元へと駆けていった。
「毛利!」
心配そうに名前を呼ぶ元親に女は気にせず元就の息を確かめた。
すると、雪を掻き集め元就の首すじや脇を冷やした。
「毛利は大丈夫なのか?」
元親が尋ねると女は頷いた。
「でももう少し遅れてたら彼は死んでいたかもしれません」
そう答える女に元親はホッと溜息を吐く。
「あんたら一体…」