きめつ
□時透くんと出会う話
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1 時透くんと会う話
長い7日間だった。
特に怪我はしなくてすんだけど、けっこう危なかった。
実際、今ここに帰ってきたのはわたしともう一人。たったの二人だった。
他のみんなは、もう帰ってこない。生きるためにここに来たのに、もう二度と帰ってこないんだ。なんだか少し悲しいけれど、そんなことを考える余裕がある自分がいることに気がついてため息をついた。
わたしにはなんだか静かそうな鴉が就いてくれた。
もう1人の帰還者は髪の長い男の子でおとなしそうな印象だ。
社会では横の繋がりも大切だよね?正直今までろくに男のかたとの関わりがなく、そのうえ人見知りのわたしにとって、初対面の(しかも男の)人に話しかけるということはとてつもなく高いハードルだけれども、鬼殺隊に1人も知り合いがいないのは困る…
鎹鴉や刀の説明をしてくれた女の子二人(黒髪の子女の子じゃないかもしれないけれど、わたしは鈍いので自信がない)も見守ってくれているし、声をかけるなら今しかないですよね!?
(その二人に無言で同意を求める)
にっこり笑いかけてくれた、気がした。
よし、この勢いで声をかける!急がないと帰っちゃうもの。
「あの!」
ボーッとどこかを見ていた彼はわたしの声に反応して横目でわたしのことを見た。
え、それめっちゃかっこいいですね。
「なに」
「あっ、えっと…わたしたち同期ってことですよね…、わたしたちしかいないし仲良く…はしてくれなくてもいいので繋がりを持てないかなって思ったんですけど…」
「…」
あぁ…何も言ってくれない…いたたまれなくなってきた。変なやつだと思われたかな、こんなのと同期なんて嫌だって思ったかな…いや、それはすごく悲しい。
「…そうだね、たしかに僕らしかいないみたいだし…少しぐらい知り合いがいてもいいか。僕は時透無一郎」
引いてたんじゃなくて考えてただけみたいだった。よかった、関わりは持てたみたい。
「わたしは雨宮琥珀です、ありがとうございます!」
「…うん、でもごめんね、たぶん君のこと忘れちゃうと思うから会うたびに挨拶してくれる?…じゃあね」
「え?あ、はい!また今度!」
そういって時透くんは立ち去っていった。忘れちゃうって言ってたけど…まぁそうか、興味なかったらそりゃ忘れるよね。わたしも昨日の夕餉とか覚えてないタイプだもの。
わたしもそろそろ帰ろうかな、ここにいても仕方ないし。
「えっと、お二人ともありがとうございました!」
日本人形みたいにかわいらしい二人に挨拶をして帰ることにした。
これでわたしも鬼殺隊の一員なんだ、気を引き締めて頑張らないと!
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