横恋慕

□Golden age3
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〔依虎SIDE〕





次々と試合をしていく中で、少しトイレに行きたくなってその場を離れた。


行く途中、鳳くんが高校生にテニスボールを渡してるのが見えた。

お人好しって言うか、なんて言うか……。





「んんーーっ。すっきりしたぁ」


伸びをしながらトイレから出た。

勿論、手にはしっかりとボールを握って。



「ただいま戻りましたぁ……」


そ…、っと皆の輪の方へ戻ると、肩をツンツンと叩かれた。


立海の人だろうと振り向くと、少し気味の悪い笑みを浮かべて高校生が立っていた。



「な、何ですか?」


「お前、女だよな?何でこの合宿にいんだ、?あぁん?」


「え、あの……」


そう言えば、何であたしがこの合宿に呼ばれたか知らない。



「そのボール寄こしてさっさと帰れや」

「い、嫌です」


これを渡しちゃいけない気がする。

渡したら、何もかも終わっちゃう気がする。



「寄こせや、オラァアアアッ!!」


その叫びと共に、ラケットが振り下ろされて来た。




「っっ!!」


怖い。あれが当たったら怪我をする。暫くテニスが出来なくなる。

あたしは声にならない悲鳴をあげ、その場に座り込んだ。






しかし痛みは一向に襲っては来ず、前を見ると、高校生がラケットを落として地面に膝を付いていた。



「な、に…?」



意味が分からなくて顔を上げると、幸村先輩が凄い形相で高校生を睨んでいた。


周りの人達もどんどん集まってきて、なんだ、なんだと言った調子だ。




「立てるかい?」

「あ、ありがとうございます…」


幸村先輩が差し出してくれた手を握って立ち上がる。




「っ、はぁッ……、はぁッ…、っっ、はあぁッ……」


高校生は尋常じゃない程息を切らしている。




「あ、あの……、幸村先輩、これ……」

幸村先輩を見た後、高校生に視線を移す。





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