short
□幸せ過ぎて、怖い
1ページ/1ページ
「幸せ過ぎて怖い」なんてフレーズを、随分昔に聞いた気がする。
あまりにも幸せ過ぎて、この後に待ち受ける未来に不安がよぎる、なんて意味だったか。
ラブラブなカップルの惚気なのだが、まさかその言葉を自分がひしひしと噛みしめる日が来ようとは。
俺の恋人は誰の目から見てもハンサムだ。
くっきりとした目鼻立ち、長いまつ毛に濁りの無い瞳。
薄い唇でキュッと結ばれた口元。
そこから発する声は俺には甘く、優しい言葉しか出てこない。
ほら、思い出すだけで頬が赤くなる。
それくらい俺は恋人にぞっこんなのだ。
それは恋人も同じらしく、
たいして可愛い訳でもない、ひねくれた30歳のちっさいおっさんを、何が良いのか、
こよなく愛してくれちゃっている。
お出かけ前とお帰りのチュウはもちろん欠かした事はないし、
家の中でのスキンシップも四六時中。そしてそのままベッドインな日常。
でも決して独りよがりじゃない。
俺が疲れてると察すれば、労るような甘いキスに、優しい抱擁だけを与えてくれるし、
スキンシップすらしんどい時は友人の様に話し相手に徹してくれる。
でもそれって、恋人に無理させちゃってるんだよね。
察してくれて、自分に合わせてもらえる事に甘えてばかりだと、ストレスたまって最後には愛想つかされて終わりになるかも。
特に男だからさ、欲求強いし。
だから、思い切って聞いてみた。
「無理してない?俺ばっかに合わせないでさ、ワガママ言っていいよ?シタい時にはシタいって言って」ってね。
そしたら俺の恋人何て言ったと思う?
「無理なんてしてないけど、我慢はしてる。だから我慢した分楽しみはとってあるから、次は、覚悟しといてね」
なんて俺の耳元で、色気たっぷりのカッコつけたいい声でささやくから、
次の時一体俺はどうなってしまうのだろうと、恐怖と興奮で腰が甘く疼いて、ゴクリと喉が音をたてた。
ある意味、
幸せ過ぎて、怖い?