℃-uteマンション

□番外編
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光は粒となり消えることなくそこにあり続けた。
そう、ももにすらも勇気を与えてくれたんだ。



【℃-uteマンション もも編】




舞美が愛理を連れて逃げた後
一時間もしないうちに騒ぎになった。



「嗣永!矢島見なかったか!?」
「…いえ、どうかしました?」

「いや…矢島が商品連れて逃げたみたいなんだ」
「…大胆ですね」



本当に落胆しきったかのようにうなだれた。





そんな騒ぎから数年が過ぎ。
ももも、17を迎えた。



いろんな事がありすぎて何を聞いても驚く気はしなかったけど
舞美が来たことは心底驚いた。


ボロボロになった舞美の目隠しを取り払いながら
思わず…漏れた一言に舞美はあざとく反応する。




「…幸せになりなよって言ったじゃん」
「もも?」



うまくごまかしながら話を変えていく。



「1時間だけ他の面子が休憩だから」
「もも一人って事?」

「そういうこと」
「もも、ごめんね」


「謝っちゃダメだよ」
「…うん、でもごめん」


なんで、戻ってくるかなって言うと
困ったような顔でヘラヘラと笑う。



「愛理は元気?」
「うん」



一拍置く、わかってるから聞きなおすために。
守るために?それとも…無理だと知った?



「愛理を守るために来たの?」
「へっ?」

「それとも、分かってきたの?追われてるのは自分だって」
「…」


「…分かってて戻ってきたのね」
「…うん、商品とペットは違うって」



ももが言った言葉を律儀に覚えていた。
そうだ、この子は忠犬だった…。



「逃げ切れれば問題はないのにね」
「あと、ももにも会いたかったのかも」


ももの言葉を遮るように、さらっとそんなことをいう。
そんなこと…言われたら泣きたくなるじゃん。


いや、止まらなくなる。


唯一の先生もいなくなって。
ももは一人になったと…わかっていたから。



「ねぇ、幸せってさぁ」
「うん」

「人それぞれ違うよね」
「うん、定義はわからないね」



時間はあと残りわずか。



「ももはね自由になりたい」
「自由?」

「うん、だから協力してくれる?」
「もちろん!」


そう答えた舞美の手をももはとった。
一つ、心残りがあるとすれば






みやに…会いたい。





痛みでうまく走れない舞美を背負いながら歩く。
ももよりも大きいからしんどいけど

この忠犬は暗い所よりお日様の下が似合うの。


だから、ももはこの犬を外に出す義務がある。
先生のためにも…ももだって幸せにならなきゃいけないんだ。




窓を乗り越えて地上に出る。
そこは数年ぶりに見る表の世界。


忘れていた。


そんな明るさと楽しさが交わう場所。




丘になっているところまで引きずっていくと
舞美は目を覚ました。



「ごめんね、もも」
「大丈夫だから謝んないの」


それから、ももが昔住んでいた場所まで
舞美と電車移動を繰り返して。


県をいくつも越えて。


数年ぶりにみた町並みはかなり変わってしまっていて
だけど、変わらない場所もあって

酷く、懐かしく感じた。




「ここに住んでたの?」
「うん…」


昔はねって言葉を心の中で思って。


変わらないものはあるけれど
ももの住んでいた町はかなり変わってしまっていた。


連れ出されては必ずといっていいほど居たあの場所すらも
マンションが建ち。


思い出は、あの頃の思い出へと変わったんだと知った。



「舞美、もういいから…帰ろっか」
「でも…せっかく来たのに」


みやだってきっと変わってしまったと思う
今、会ったってわかりすらしないよ、きっと。


「じゃ…その子といたって場所にもう一回行こう?」
「…だから、もう」



腕を引かれて。



「ま、まいみっ!?」
「せっかく出れたのに、諦めるなんて絶対ダメっ!」



足がもつれそうなくらいに速く走る。



「もう、もういいって!!」
「っ!…もも?」


痛い、苦しい、辛い。
こんなに感情が飛び出してくるのは


久しぶりでどうしたらいいかわからない。



「よく考えたら…みやはきっと会ってくれないよ…怒ってるって」
「そんなわけないじゃんってか、やっと…見つけた」


声がした。
あの頃に戻ったかのように錯覚させられたあの懐かしい声が



「もう、逃がさないから」
「…みや」


髪は染めて背も高くなっていて
だけど、みやはみやだった。

桃の知ってるみやだったの


「よかった、元気そうで」
「みやこそ」




会いたかった。



「なにー?憎まれ口叩く前にうちの前からいなくなった理由を教えてよ」
「そんなの叩いてないし」



そんな一言はきっと、言わなくても



伝わるんだね。



「ももっ!!」


舞美の一声に遅れて怒声が響いた。



「嗣永がああ!!このしねっ!!」

「雅さんっ!?」


目の前にいたはずのみやはももを突き飛ばしてそのまま
刃物を腹部で受け止めた。

逆上してる男はみやを何度もメッタ刺しにして
そのさまをももは舞美に抑えられながら見てることしか


出来なかった。



鈍い音のあと舞美が倒れ込んだ。




カチャ



「ジ・エンドだ、嗣永」



頭に突きつけられた拳銃。
路上に倒れ込んだ舞美。

血の海を作るみや。


「舞美は?この子はどうするの?」
「矢島か、そうだなこいつは使える」




殺すのは惜しいな。と冷たい声が響く。




「お前は裏切りすぎた、そこのお友達と同じ場所へ送ってやろう」



こんな状態で思うのは舞美の幸せと舞美の近くにいる子の
幸せ。



大きな音がして撃たれたと分かる前に
みやの声がした気がした。


「ももってば!」
「もも、疲れすぎたのかも…みやの声がする」


その瞬間頭が急に下を向いた。

そこに見えたのは、担がれた舞美と袋に入れられてる
みやともも。


…。
あれ?なんであんな血だらけ?



ってか、なんでここにいるのに下にもいるの!?
じゃない!反対じゃん!



「まったく」
「…みや」


「うちらは死んだんだよ」
「うん、今わかった」


お葬式もなにもない。
ももたちはどこか深くに捨てられる。


でも、それも…ももたちが生き抜いた証。



「ごめんね、みや」
「なに言ってんの」


眉間にしわを寄せたみや。
不機嫌だ。見るからに機嫌悪いよね…。


「…」
「うちはね、ももが居なくなってから」


急に話し始めたみやの言葉に耳を傾ける。


「数年をあのまま過ごしてそのあと5年は路上で暮らしてた」
「そ、うなんだ…」

「だから、ももがいればそんな生活もいいかなって思って」
「へっ?」


手を握られて。
強く痛いくらいに。


「ずっと、ももを探してたの、うちは」
「…ごめんなさい、そしてありがとう…みや」


久しぶりにみた、みやの無邪気な笑顔にとうとう
涙が止まらなくなって。


「あ〜あ、泣き虫ももは変わらないんだねぇ」
「みやのせいじゃんっ」


そのまま、ぐっと引き寄せられて
みやの腕の中に収まった。


「知ってるよ、うちはずっとももの近くにいたんだから」
「…なら」

「ももは変わってなんかいないって知ってたけど
強くならなきゃいられないのも知ってた」
「みやがいたからだよ、ももはみやがいたからももでいられた」



手を引いてくれるみやの手をしっかり握って



「次はキラキラした世界に行こう?」
「うん」


いつまでも、どこまでもついてくねって
言える距離がももは嬉しくてたまらないんだよ


「ほら、速く行こう!」
「やだーみや、足おそいw」

「ちょっ!まて、こらっ!」
「きゃ〜ww」





おわり
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