℃-uteマンション

□℃-uteマンション 4
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今日は商品が届く。
その為か、周りがそわそわしてるように感じた。



【℃-uteマンション 4 後半】



3日前ほどももに聞いた
商品、それがどうやら今日届くらしい。

みんなそわそわしている。


「先生」
「先生?」

「うん、ももが高島を先生って呼んでたから」
「もも?…嗣永か?」

たしか、そんな苗字だったはず。

「たぶん、そうです」
「あぁ、会ったのか」


先生は当時と比べると対等に扱ってくれるようになった。
お前が一人前になったからだって言っていたけど。


私はどう考えても、一人前じゃない。


「変わったやつだろ?」
「はい、とても」

笑いながら、頭をくしゃくしゃにされる。

「あいつは不器用な奴だよ」
「…」

遠くを見るような目をしながら教えてくれる。

「いい子過ぎるな…おまえもあいつも本当は幸せになってほしい」
「先生…」


なんだか、苦しそうに笑う。
泣きたくなったのは私の中にとどめておく。



「さて、そろそろ商品が届くからいくぞ」
「はい」



入り口で人がわさわさしてる。
トラックが入ってきて、いつも、私をいじめるやつが

仕事してます、俺的な顔で女の子を連れ出していく。


皆、可愛いけどおびえてる。
当たり前か、慣れてきた私がおかしいんだ。


「仕分けに入るだろうから、武術に入る」
「仕分け?」


そういうと、歩いて話すって言って行ってしまった。
慌てて追いかけていく。

「商品が人であることは分かった?」
「はい」

「仕分けとは、値段つけるみたいなこと」
「あ…値段ですか」

今、思えば忠告だった。
高島が言った事を守っていればまた違ったのかもしれない。

「ああ…やじ」
「はい」

「調教室へはしばらく、いくなよ」
「え?調教室?」


どこだろう、そんな所があるんだ。


「お前が鞭で打たれてたとこだ」
「あ…はい」


なるほど。


「俺ですら、見るに堪えない代物だからよ」
「…」

俺ですらって先生はグロいの全般ダメなんじゃ…
グロいの…グロい?

「グロい系ですか?」
「まぁ、…そうだな」


はぐらかされた、なんだか気になる。
好奇心は時に自分の首を絞めると知る事になる。


「がはっ!…うっ〜つっ」
「集中力がたりねぇぞ」

そういわれても、さっきの話がちらついて
集中できない。

「いっぁ…」
「ほら、これじゃ肋骨いっちゃうな」


先生の蹴りがクリーンヒットした。
体が崩れ落ちる。


「おまえは、進歩したんだかしてないんだかわかんないな」
「いっ…先生手加減してください」

「集中力が切れなきゃ勝てる相手だ、甘い」
「うぅ…はい」


私の部屋のベットまで運んでくれた事を感謝しながら
嬉々として蹴りを入れてくれた先生には次回倍返し、しよう。


「つっ…はぁ…」

痛いけど、動く事に支障はなさそう。
先生も朝まではこないし。

調教室の近くまで歩いていくと、音がする。
…鞭の音だと思うんだけど、複数の声が邪魔をする。


悲鳴だ。

いやーとかたすけてーとか
沢山の悲鳴に飲まれそうになる。

鞭を振るってるあいつが私に気がついたようで
こちらへ来るのが足音で分かる。

「だれだっ!…あれ」
「なにしてんだよ、誰かいたのか?」


「気配がしたんだけど…気のせいだ」
「時間がないから早く終わらすぞ」

男達の会話が聞こえる。


「危なかったね」
「…もも?」

とっさの事で声が出ないように口を塞がれて。
ももが後ろへ引いてくれた。

「見つかるとやっかいだよ」
「う、うん」

ドアを横目で見ながら、教えてくれる。
何回目だろう、先生の不器用な奴って言葉が頭を過ぎる。

「ありがとう…」
「いいえ」

「ももは、どうしてここへ?」
「え?ももは新商品が入るたびに来てるんだ」

嬉しそうな声でそう言う。

「可愛い子多いしさ…男にやられるなら
女のほうがまだ良いでしょ」
「…そうだね」


何も出来ない、だからこその優しさなのかもしれない。
普通にみたら、優しくなんかないと思う。

でも、気に入ったって言ってほとんどの子とやろうとするんだろうな
って、その姿が浮かんだ。

「なに、笑ってるの」
「うんん、私さ」


少し不機嫌そうなももに私が出来る精一杯を


「もものこと大好きだよ」
「えっ…あ、ありがと」

あからさまに照れられる。
流石に、そこまで照れられると

こっちも恥ずかしい。


「私も舞美は好きだよ」
「ありがと」

ももからも言ってくれる。
ふと、気がつく、いつも、ももは〜ももは〜って言うのに。

私って言ってた。


「今日は帰りな?」
「うん」

「気になるなら明日」
「分かった」


そのまま、別れた。


翌日の武術も座学も順調に行って
高島に褒められるほどうまく出来た。


「やじ、お前」
「はい」

「昨日どこいってた?」
「え?」


どうやら、ばれていたようで。
拳骨を落とされる。

「いったぁ…」
「それくらいですんでありがたいと思え」

「すみません」
「いや、いい」

「先生?」
「行きたいなら話しを通しといてやる」

先生からそんな事をいってもらえる。

「ほんとですか?」
「あぁ、今日も嗣永が居るだろうからあいつのそばにいろ」

「はい、ありがとうございます!」
「本当に、返事だけはいいな」


ももがもしかしたら言ってくれたのかも知れない。
ももには、いつも助けられてしまう。

お返し、したいな。


「舞美」
「もも」

ニコニコしながら近づいてくる。

「先生から話は聞いたよ」
「うん、よろしく」

もちろんって言ってじゃー行くよって
ドアを開けた。


「お、嗣永やっときたか…ん?矢島も?」
「はい、私もです」


そういえば、男は疲れているらしく
よろしく頼むと鞭を渡されて出て行った。

「え…」
「よかったね、今日はあと6時間ももたちだけだよ」

「6時間?なにするの?」
「調教」

あっさり言ってるけど、怖いよね?
調教って普通に聞いたら痛いし怖いはず。


「ほらっ、いくよ」
「う、うん」

鞭をもってもう一つ奥の部屋へ入る。
そこには、確かにかわいい女の子が沢山居た。


「…楽しいんだよ、可愛い子を泣かすのって」
「…もも?」

ももの目が曇る。
部屋の中を見渡せば、泣いてる子、目がうつろな子。


様々な反応をしている。


そのなかでも、目を引いたのは一見凛としてるけど
近づくと、怯えが手に取るように分かる。

なんか、気になる。

「ほらっ、舞美も打ってみな」
「う、うん」


手加減はいらないよ。
売り物にするために命令に忠実な人形を作るんだから。

その言葉でそういう世界なんだと思い出した。


ももと一緒に沢山の女の子を泣かせた。
沢山の女の子を意地悪な命令に晒した。

そして、桃を見てると、初めての子を犯していた。
初めてしかしない、非道な奴に見えるかもしれないけど

焦ってるんだって分かる。
打ったり、命令とかは私にさせて


一心不乱に、女の子を犯していく。



痛くないように、苦しくないように。
なるべく優しくやってるのも知ってる。



「おぉ、今日は矢島も来てたのか」
「あ、うん」

「楽しいか?」
「それなりには」

「そうか、だったら送り出すまで来い」
「いいの?」

「人が足りてないんだ、来ないと困る」
「了解」

男が来ると、怯えが酷くなる少女達。
確かに、酷いものだ。

そして、一通り終えると注射器のようなもので
何かを注入していく。

「なに、してるの?」
「麻薬を投下してるの」

男が答えるよりも早く。
ももが言った。

「麻薬?」
「そう、逃げられないように」

「そんな」
「もう、ここにきたら壊れてくだけ」


諦めたような表情。
あの時も見た。

でも、なにも言い返す言葉は見つからなかった。



その日から私は調教室へ入り浸りになった。
見ていると分かった事がある。

個々によって程度が違う。


一際やられてるのは、愛理と呼ばれた子だった。



送り出すには1年はかかるらしい。
最短で、半年。

毎日、毎日女の子を泣かせる。

少女は麻薬でおかしくなっていく。


「半数は薬で売り物に出来ない」
「まぁ、仕方ないよね」


そんな会話を聞いて、愛理は大丈夫だろうかと思ったんだ。


「そろそろ、第一出荷の準備入るぞ」
「もう、そんな時期なんですね〜」


ももと男の会話を聞く。

いけそうなのをいかせるらしい。

見繕っていく。
愛理は残された。


「じゃー戻るのは夜になる」
「おっけーちゃんと来てよ?」


今日、ももと2人きりになる。
きっと、チャンスはここしかない。


愛理は大麻に強いらしく。
たまに、虚ろな目をしてる以外には普通と変わりなかった。


「もも」
「ん?」

「独房に行っていい?」
「お気に入り見つけたの?」

そういって、ニヤニヤするもも

「うん」
「いいよ〜いってらっしゃ〜い」


ただ…ただ、話してみたかっただけなんだ。


「こんにちは」
「…こ、…こんにち」

いきなり行ったら吃驚されて。
周りからの視線がすごい。


「愛理ちゃん、だよね?」
「は、はい」


愛理には一度も手を上げてないけど。
私が他の子を叩いてるの見てるから怖がられて当たり前だ。

「私、矢島って言うの」
「矢島さん…」

それでも、仲良くなりたくて。
その日を境に、終わると独房へ通うようになった。


「それでねーももがニヤニヤしててさー」
「舞美ちゃんがニヤニヤさせたのね、きっと」


ふにゃふにゃと笑って言葉も大分崩れてきた。
初日からもう1ヶ月が経っていた。


「愛理、これ」
「…舞美ちゃん?」

独房は、大勢居る。
だから、去り際にさらっと渡す。


「舞美…」
「もも」

ももは真剣な顔をしている。
ももには、もう報告済み。

愛理をこれ以上、辛い思いさせたくない。
だから、相談した。


「予定通りだよ」
「ありがと」


手紙には、今夜逃げるからついてこないかと書いた。
独房の鍵は開ける。

そこで、来てくれなかったら
私の未来は死のみ。


「それにしても、大胆か賭けだよね」
「うん」

「舞美らしいと言うか」
「ほんとに、感謝してる」

ももをぎゅっと抱きしめる。
最後まで、反対もせずに協力してくれた。

こんなに親身になってくれる人はきっとそうはいない。

身じろぐけど、照れから暴れてるって知ってるから
暴れさせておく。



「もーまいみ〜」
「もも、幸せになってよね」

目を見てそういえば、吃驚した顔したけど
すぐに、胸に顔をうずめられた。

「舞美こそ、言ったからには幸せになるんだよ」
「うん、また会えると良いね」


ももから離れて頭を撫でてあげる。
心から甘えられる人、見つかるといいね。

「も、もも…」
「…もう、行って」

俯いてる顔から雫が落ちた。

「で、でも」
「時間ないから、早くっ」


背中を押されて。
愛理と逃げた。

愛理は迷うことなく私の手を握ってくれた。


ももに次あったのは
自ら捕まったあの時。


拘束されて打たれ続けて意識が朦朧としてきた頃だった。


「…幸せになりなよって言ったじゃん」
「もも?」


目隠しを取り払われる。


「1時間だけ他の面子が休憩だから」
「もも一人って事?」

「そういうこと」
「もも、ごめんね」


「謝っちゃダメだよ」
「もも?」

なんで、戻ってくるかなって困った顔で言われる。


「愛理は元気?」
「うん」


それもあった、きっと追われていたのは私で
愛理は商品だけど一度逃げられればもう、いらないのがここのスタンスだから


「愛理を守るために来たの?」
「へっ?」

「それとも、分かってきたの?追われてるのは自分だって」
「…」


「…分かってて戻ってきたのね」
「…うん、商品とペットは違うって」


そういえば、ももが寂しげな顔をして
こっちをずっと見てくる。


「逃げ切れれば問題はないのにね」
「あと、ももにも会いたかったのかも」


おでこを軽く弾かれる。
ももの瞳からあふれ出しそうなほどの涙。

「ねぇ、幸せってさぁ」
「うん」

「人それぞれ違うよね」
「まぁ」


時間はあと30分。


「ももはね自由になりたい」
「自由?」

「うん、だから協力してくれる?」
「もちろん!」



その瞬間、痛みが全身に走った。
苦しい、痛い。

まぶたを閉じて、痛みに耐える。
背中や頭にぬくもりも感じる。

そっと、まぶたを開けば見えたのはももではなかった。


「え、り?」
「舞美」

汗をぬぐってくれる。

「痛い?」
「大丈夫」

ももは?どうなった


「ま、まいみ?!」

えりの驚く声が聞こえるけど
ただ、溢れ出た涙は止まる術を知らずに流れ落ちていくだけだった。


えりが撫でてくれる。
すごく、心地いい。

皆がそばに居てくれる。
すごく、嬉しい。

今、私は家族が居る。
皆を守れるだけの力が欲しい。




だから、明日からいつもの私に戻るから
今は、えりに抱かれて沢山泣かせてもらった。


「えりぃ…」
「舞美、沢山泣きな」

「ふぇっ…もも…」
「(撫で続けてる)」

私は、いつのまにか眠りに落ちていた。



―――――――

ももって誰だろう。
あの状態で呼ぶくらいだから

大事な人?


「愛理」
「ん?」

「ももって誰?」
「もも?…嗣永さんかな」

嗣永?

「舞美が言ってたんだけどね」
「あ、じゃー嗣永さんだ」

愛理がふにゃって笑う。
この2人をここまで心開かせるいい人なんだろう。


「そっか、いい人みたいだね」
「うん、優しい人だった」


そう、微笑む愛理になんだか穏やかな気分になって
秋晴れの空を見上げた。


めぐはもう、居ないけれど
また、みんなで過ごせる事がなにより嬉しくて


窓を開ければ、もうすぐやってくる
冬の匂いが風に乗ってやってきた。





つづく
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