秋風に吹かれて 完結

□14話
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真っ赤なもみじの絨毯。
秋風は肌寒い。


【秋風に吹かれて 14】



いろいろあった。
この子に姉らしき事ちゃんとしてあげれていないし

今も、私を守って死ねるのは意味があるのは幸せだと
ぐずぐずと泣きながら教えてくれた。




舞美がそう言った一時間後くらいに集合がかかった。




結果は、整備兵の出撃免除だ。


「ね、言ったとおりになったでしょ?」
「舞美…」


無理に笑ってることくらい分かるよ
私の前でくらい、笑わなくてもいいのに。


「えり…ごめんね」
「な、なにが」


まだ、隠してることがあったの?って舞美を見据えた瞬間。
俯いてはいるけれどボロボロとこぼれる涙をぬぐう。


「傷になるから擦らないの」
「で、でも」

ぐすぐすいいながらまだ笑う。


「もう、無理に笑わなくて良いから」
「う、うん…ぐすっ」


舞美の出撃は早朝の6時。
今日は、ここで一緒に寝よう。


「舞美ちゃん!」
「やじ!」
「舞美」

顔を上げた舞美はスッキリした様な顔をしていて
よかった。

愛理やみやとかに頭を撫でられたり
背中をさすられたりはぐされて嬉しそうだし

そろそろ、部屋につれて…行きたい。




ーーーーーーーーー



「みんな、優しくしてくれて」
「うん」

「それでね」
「うん」


それから、ベットへ入れてもしゃべりっぱなし。


「最後まで泣いてて情けなくて…ごめんね」
「なに言ってんの、立派過ぎだよ」

「へへっ」


いたずらっ子のように照れながら笑う舞美が…かわいい。


「ほら、おいで」



両手を広げれば


「あだっ!」
「あ、ご、ごめん」


犬のように突進された挙句がっつり頭突きされて
不覚にも伸びてしまった。



---------------


なんだか、まぶしくて。
身体を起こすと隣ですやすやと眠っている舞美。

違和感に周りを見渡してみた。
誰も居ない。

この部屋は6人部屋のはずなんだけど…。


「んっ…うぅ」

はっと、つい癖で頭を撫でると嬉しそうにしながら
むにゃむにゃ言い出したから、大丈夫だと思う。


部屋を出て大広間へ足を運べば
みんな、集まっていた。


「な、なにしてるの?」
「えりかちゃんこそなにやってるの」

愛理が驚いたように返してくる。

「い、いや、こっちの台詞でしょ」
「最後…って言いたくないけど、出来ること、ある時間は大事に使わないと」


低いトーン。


それ以上に言葉をこれ以上に重く聴いたことはない。
そうだ、皆経験してるんだ。

経験してないのはうちだけ。



「ありがと…おやすみ!」

「「「おやすみー」」」


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怖い夢を見た、怖くて飛び起きた。
心臓がどきどきして、吐きそう。

……。

私、一人だったっけ?
今日はえりが隣に居たはずなんだけど

えりどころか、私以外、誰、一人居ない。


そうか、これはきっと夢なんだ。
まだ、私寝てるんだきっと。


「えっぐ…んっ…」

また、涙が零れ落ちてくる。
情けない、こんなに動揺するなんて。


顔を膝に埋める
あと、私に与えられた時間はどれだけあるんだろう。


「ま、まいみっ!」
「えり」

足早に来て心配そうな顔で覗き込まれる。

「怖い夢でも見た?」
「…うん」

あれ…?

「そっか、もう大丈夫だから一緒に寝ようね」
「うん」


この会話どこかで聞いたことがある。


「へへっ」
「ん?どうしたの?」


布団をかぶせてくるえりが不思議そうな顔をした。


「えりも変わらないね」
「ん??そうかなー?少しは変わったと思うんだけど…」


落ち込み始めたえりに抱きつく。


「悪い意味じゃないよ!なんだか懐かしかっただけ」
「そっか、それなら舞美も変わらないね」

「私は変わったよ、ほら今はえりの頭も撫でて上げられるし」
「ちょっ、舞美」


わしゃわしゃとえりの頭を撫でる。
そうだ、泣いてる暇はない。

「ま、舞美!?」

えりを抱きしめる。
触れている場所からくる暖かさとドクンドクンって音。


「えり」
「どーしたの?」

頭を撫でられてる。
やっぱり、えりには敵わない。


「次、生まれ変わったら…」
「ん?」

「次は平和な世の中で…ずっと一緒に居ようね」
「当たり前でしょ!今度は絶対手放さないんだからね」



やっぱり、私は誰よりも幸せなんだ。
そして、えりにはこれから先、私を忘れて幸せに生きてほしい。


力強く。






つづく

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