秋風に吹かれて 完結

□9話
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なびく神国日本の旗を眺める。
これは、死ねという作戦じゃない。


命令だ。



【秋風に吹かれて 9】



愛理と話して、隠した気持ちももしかしたら出てたかもしれない。
もう、翌日まで迫った出撃を伝えても

愛理は叫んだり泣き崩れたりしなかった。
凛として目の前で強く抱きしめてくれた


でも、それがなんだか堪えてるのを実感させて
本当は泣きたいなら泣かせてやればよかったし

叫びたいなら叫ばせてやればよかったけど
それをさせられるほど私は何かをいえた訳でもなく。





考えながら歩いていたら目の前に人が見えた。

あれは、千聖かな。
私と同じく残して発たねばならないうちの一人。


「千聖!」
「あ…」


気まずそうに顔を背けたけど一瞬でも把握できるほど
千聖はぼろぼろだった。


「ちょっ?!どうしたの、それ!」
「あー…大丈夫」


ただ、苦笑いで大丈夫と繰り返す千聖を連れて
軍部付属病院へ飛び込んだ。


明かりがあるところでみれば尚更酷さが伺える。


「どうして、そんな事になったの?」
「上官に噛み付いた…」


ぽろぽろっと言葉をこぼす。

手当てもほどほどに帰路での会話。


「なんでそんなこと…」
「…」


ただ、顔を伏せるだけでなにも分からないけど
千聖は何かのために戦ったようで。



「…千聖」
「…やだった…死なせたくなかったんだもん」


握り締めたこぶしを震わせて声まで震え始めて
私が出来なかったことをいとも簡単に超えていく。


「あの舞が泣いた…見てられなかった…だから、千聖の出来る限りをしようって」
「うん、よくやったよ…千聖」


顔を上げた千聖は泣いては居なかったけど
悲痛な面持ちではあった。


頭をがしがしと撫でてやると泣きそうな顔をして
また少し顔を伏せたんだ。


そうだ、まだこの子は19歳。
私だって20歳でここに居る選抜は10代ばかりの編成。



神国とか言って祭り上げて実際はどうだろう。
今の私に出来る事。



隣に居る、千聖の肩を抱いて笑いながら歩いて帰った。




--------------


愛理から今日業務中に聞いた話。
私たちは最終の6部隊目での出撃だけど

三回だけ一人連れて行かれるらしい。
今回はなっきぃだそうで。


最終は2人

残りたくない、先に行きたいとすら願ってしまう
こんな気持ちで行っていいものなのかすらも判断つかない。


初回、第一回の出撃部隊は栞菜と千聖で
それになっきぃが乗る。


もう、それもあと数時間に迫っていた。


表情も変えずにいつもと変わらない愛理
それがなんだか違和感でつい愛理を目で追ってしまって

舞美の変化に気づくことが出来なかった。
それが未来を分けるんだとしてもうちは正しい選択を出来たのか


わからない。



ただ、目の前の現実を見ることしか
流れるときを見つめることしか出来なかった。



つづく

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