秋風に吹かれて 完結

□8話
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まっすぐに伸びるあの向こうへ。
一陣の風を突きぬけて飛んでみたい。


【秋風に吹かれて 8】



愛理視点



この前はえりかちゃんと話した。
夜、こっそりと。

月夜に照らされたえりかちゃんは儚げで
今にも消えそうで、なんだか怖かった。


その数日後、なんだか舞美ちゃんの様子がおかしくて
気になって眺めていたら後ろから栞菜が来てくれた。



「なになに、矢島さんが気になるとみた!」
「栞菜…舞美ちゃんさ、様子おかしくない?」



そういえば予想外に顔を一瞬だけ引きつらせた。
なんだろう、この顔…前にも見たことある…気がする。



「舞美ちゃん…出撃日決まったからじゃない?」
「え、決まったの!?」


無理して笑う栞菜。
そんな、顔見たいわけじゃないんだけどな…。

でも、瞬間ふと疑問がわいた。


「もう、板に出てるって事?」
「うん、ついさっき張り出された」

「…栞菜は?」
「ん?」

「まだ、だよね?ほかに出撃するのは誰?」
「…千聖と私」


栞菜が何を言ってるのか分からなかった。
ただ、頭にものすごい衝撃があったって事は分かったけど。


「せ、整備兵は?」
「…ごめん、ごめんね…愛理っ」


笑ってるのに涙が伝って落ちていく。
そっと、涙をぬぐってあげる。

涙が落ちていくのに変わらず笑っているのが心苦しくて
私は少し強めに抱きしめた。

言葉も理解出来ていないまま。
ごめんねがなんのごめんなのか知らなかった。


ただ、今の栞菜を一人にしたくなかった。

強く体を押される、見れば涙は止まってるものの
顔は険しい。


「愛理」
「…栞菜?」

手を取られ、栞菜はやっぱり笑っていた。


「明日でさよならだよ、愛理」
「…栞菜」

「整備はなっきぃだよ」
「…そっか」


でも、私の好きな笑顔ではなかった。




つづく

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