秋風に吹かれて 完結

□6話
1ページ/1ページ

選抜に選ばれてから空を見上げる事が多くなった。
今日も広がる秋の空、まっすぐに広がる希望の色。



【秋風に吹かれて 6】



えりには言った。
とうとう、事実を伝えてしまった。

でも、よかったと思ってる。

舞ちゃんが泣いていたのは意外だったけど。
意地っ張りなんだよね。


選抜に選ばれてからは出撃まで訓練と自由時間の繰り返し。
今までの軍生活が嘘みたいに楽しい。



自由を感じれるって幸せな事なんだなって思ったりした。




「舞美ちゃーん!」
「栞菜?」


覚悟を決めたような表情で真正面に向かってきた。


「愛理に言った」
「すごい、それでなんだって?」

「一瞬寂しそうな顔をされたけど…嬉しそうだった」


笑顔なのに寂しげに見えた栞菜になんて声をかけていいかわからなかった。



「そ、そっか」
「うん、もう皆も言うと思う…時間ないしね」


「そうだね…」
「うん…」



栞菜を見送っていて、金木犀の近くで足を止める。
昨日の夜、えりと話してから情報板を見た。


私の出撃は3部隊目。


最終で6だから、私のほうが先に行く事になる。


これから、まだあるというのに何で整備兵まで行かせる必要がある?
大人の、国の命令には逆らえない。

まだ、子供の私たちにはなにも変えられない。



そんな、気持ちが心をどんどん占めていく。


気持ちは心は表面は教育で変えられる。
でも、心の奥までは変えられない。



私はえりを守るために…守るために入ったのにな…。



「…えり」


小さなつぶやきは風が連れ去ってくれた。
大好きな航空機を眺めてなんだか、泣きたくなったんだ。



――――――――


舞美の様子がおかしい。
色々聞いた、確かにショックもあったけど


一人で行かれるよりは断然こっちのほうがいいに決まってる。
のに…胸騒ぎに目がさえて仕方ないから横になりながら窓の外を眺めると


朧月夜だった。


「わぁ…綺麗」
「んっ…えりかちゃん?」


大分、寝ぼけている声でもぞもぞと動いてるかたまり。
寝ぼけ眼でこすっているのがすっごく可愛い。



「ごめん、起こしちゃったね」
「うんん…ふあぁ…えりかちゃん…眠れないの?」


ちょいちょい、あくびが入るのはご愛嬌。
月夜で照らされた愛理の顔はとても神秘的でとっても…綺麗だった。


だからこそ、今までの出会いや絆を守りたいと思う。
舞美に話を聞いたときは一緒に行けるって喜びが先に立ったけど


本当はそれじゃいけないんだ。


寝ぼけてる愛理の手を握ったら嬉しそうに笑って
目を閉じた。

実感がないだけかもしれないし
いざ、目の前にしたらどうなるかわからない。



ただ、舞美が知っている世界をうちが知らなかっただけだった。






つづく

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ