秋風に吹かれて 完結

□3話
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大きな空に抱かれて、私はその瞬間が
すごく好きだった。


【秋風に吹かれて 3】



舞美視点


春の日差しが照りつけるそんな日に
私は、現実を知った。

私とえりは同じ軍人でも所属部隊が違う
そして、今は戦争をしている。

私たちは国を守る道具。

当たり前だけど、受け入れるしか選択肢はなかった。


「なんか、元気ないじゃん?」
「あ、うん…」

「…やっぱ、辛い?」
「うんん、なんかそうなるかもって思ってたし…」

「そっか」
「うん」


「ねぇ、栞菜」
「ん?」

「栞菜は愛理に話した?」
「まだ、話せてない…」


そう、見るからに暗くなった栞菜。
当たり前か、言えば別れを実感してしまうし

なにより、悲しませる。


そう、今落ち込んでるこの子は
部隊に所属されてから仲良くなった、友達だ。

そして、愛理とは栞菜の妹。


極秘の任務、私たちは(特別攻撃隊 選抜隊)と呼ばれる
初期選抜に選ばれてしまった。


自分の名前を確認したときは倒れるかと思ったけど
死ぬ覚悟は入隊時にしている。


もう、駄目だと思ったら、体当たりして沈める事だって
当たり前に頭にある。


でも、最初から体当たりするつもりで帰還は許されない
そんな、無茶な作戦は、正直やりたくないけど

拒否は許されないし。
なにより、守るため。


でも、約束守れないって事だよね。
少し、罪悪感、感じるけど仕方がない。


その夜、自由時間に私は宿舎を出て
整備兵がいる宿舎へ向かった。





えりか視点




仕事も終わり、食事も終わり
ゴロゴロしていたら、呼ばれて玄関まで行った。

そこに、立っていたのはまだ、飛行服を着用している
舞美だった。

なんだか、やな予感がする。
いつになく、真剣な表情を浮かべている。


「えっと、どうかした?」
「話があって…」

「ん?昼間、話、出来なかったこと?」
「うん」

「なに?」
「…ごめんね、えり…ごめん…なさぃ」


昼間、いつものように一緒に話して
そんなときは見せなかった。

泣きながら、謝り始めた舞美に私が困惑する。


「舞美、謝ってばかりじゃわかんないよ?」
「…大命が下りました。」

「え?…う、うそでしょ?」
「うんん、本当に極秘らしくて、住所を教えることも出来ないって
だから、手紙も出来なくなるし、何より…約束守れなくてごめん」


命を懸けた極秘作戦を大命と呼んでいた。
ギリギリまでいわなかったって事は、相当やばいんだって

それしか、思いつかなかった。



「終わったら、ちゃんと帰ってきてよ?」
「えり…」

「死ぬなんて許さないから」
「うん、えり、絶対助かるように祈っててよ?」


そう、言いながら微笑んで
それが、すごく、辛かった。

でも、舞美はちゃんと言ってくれてたんだよね。
約束守れないって、泣きながらごめんねって

その、夜、私は眠れなかった。



数日後、舞美は戦地へ。
笑顔で、手を振って飛んで行った。


数人と航空機で見えなくなるまで
見上げた空はどこまでも青かった。



この、数ヵ月後、極秘任務が始まることを知る。
それには、整備兵の選抜も決まっていて。



そして、私たちは、選抜隊と呼ばれる事となった。






つづく

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