秋風に吹かれて 完結

□2話
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私たちは元から鬼才とよばれていた。

冷たい才能だと…言われていた。


【秋風に吹かれて 2】



えりか視点


実は、舞美は好きなだけあって
航空学も操縦の腕もよかった。

私は、整備兵としてはトップの成績を誇って
教育隊を卒業した。

しっかり、叩き込まれる予科練や兵学校と違う
普通に入隊した、私はもう、一人前の兵士として

振舞うことになった。


この、冷酷な技術は人を殺すしか出来ない
それと、仲間を生かす。

見事に予科練の選抜を通った舞美に
落ち着いた頃、私は現在の生活を手紙で送った。

もちろん、批判の嵐だった上に
予科練の隣が工場なので飛んできた舞美に

殴られそうになった。


「え、えり…どういう事!?」
「ごめんね、黙ってて」

「いいから、いいから説明してよ!」
「私も守りたいものがあったってだけ」

少し間があって顔を伏せた。

「やだよ…やだよぉ…こんなのやだっ」
急に泣き崩れた舞美に私がおろおろする。

「泣かないの、死ぬわけじゃないんだから」
「でも、でも…」

「そんなんじゃ、生きられるものも生きられないから」
「…そうだね」

そういって立ち上がった舞美はすでに軍人の顔をしていた。



「整備兵なら、最前線はないもんね」
言い聞かせるかのように繰り返す舞美

「私は、舞美を守るから、この腕で」
「じゃー私は敵に上陸させないようにしないとね」

そう笑った顔がまぶしかった。



そんなやり取りも、もう3年も前のこと。
今は2人で立派に軍人だ。


近いから会うことも出来るし。
言うことなし。


「ねぇねぇ、聞いて聞いて」
「ん?」

「亀井さんに褒めらたよ、とか言って?」
「え、怒られたの?」

「ちがう、褒められたの」
「舞美、有名になりつつあるもんね」

「ん〜そんなことないんだけどな」

そういいながら、空を見上げてる舞美は顔が赤いのを隠してる
つもりなのかな、耳が赤いし。



数日後、血だらけの舞美が運ばれたと聞いたとき

血の気が引いた。


気がついたら、軍付属病院の中を走っていた。

「まいみ、舞美!」
「あぁ、えり…ごめん、心配かけて」


そういいながら、笑う舞美は血だらけ
それでも、手当ては出来ているらしい。

私はしばらく、休み時間の間、病院へ通うのが
習慣となった。


そして、動く程度に治った舞美にある命令が下された。
嵐は、突然にやってくる。


一時の別れ、私と舞美は同じ軍人でもジャンルが違うんだと
思い知らされた、瞬間でもあった。



つづく

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