秋風に吹かれて 完結

□1話
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ある日、私たちの国は突然ぶちぎれた。

そして、戦争が起こり、軍人制度が出来て2年





【秋風に吹かれて 1】






えりか視点


戦争に入ってもうそこそこ経つある日の事
軍人が街中を普通に歩いてる

爆弾が落ちてきたり
死体が川から流されてきたり。


それが、日常化してきていたある日のこと。


テレビを見ていた舞美が目をきらきらさせていた。
それは、敵陣を潰した戦勝報告。

「亀井さん、かっこいい」
「…」

「ねぇ、えり?」
「なに?」


「私も受けようかな」
「え?なにを?」

「予科練、私も軍に入りたい」
「だ、だめ!」

そう、思わず叫んでしまって、
舞美の驚いた顔を見て少し後悔した。

「え〜でも、お金も、もらえるし、食べ物だって」
「でも、だめ」

「でも、でも、田中さんも亀井さんも入ってるじゃん」
「…」

近所の仲良しさんが軍に入ってから
しょっちゅう、テレビで見かける上に手紙が来て…

それで、元々、航空機が好きな舞美は
軍に入りたがる。


「…やだよ」
「えり?」

「私は舞美が死んだら生きてけない…」
「死なない…それに、戦争にいけば…敵討ちできる」

そう、いって俯いた舞美は黒い雰囲気をまとっていた。

「でも…離れたくない」
「?」

「一人でうちにいるなんて…戦場に妹一人送り込むとか
まともな精神じゃ出来ないよ!」

「えり…」
「私は、飛行気乗りにはきっとなれない」

「だ、だめ!」
「?」

「えりは…えりはね」
「うん」

「軍に入っちゃやだっ」
「なんで?」

「整備兵ならいけるよ?」
「うん、それはわかるけどやだっ!」


「舞美…」
「軍に入れば、戦えなければ死ぬだけだもん」


そう、泣きそうな声で言われたら
どうしようもないじゃん。


数日後、うちは舞美を一人送り出した。
でも、それは上辺の話。

うちは舞美にばれないように
こっそりと、整備兵に志願した。


運動神経のいい
さらに、そこそこ読解力もあるから

舞美はそれこそ、行くとこまで行けるだろう
でも、歴史は繰り返す。


昔、この国で起こった、追い込まれたときの
パターンを私は知っていた。

それに、舞美を巻き込みたくない。



受ける前日


私は最後に聞いておきたかった。
この、答えが間違っていたら、意地でも受けさせるつもりはなかった。



「ねぇ、舞美」
「ん?」

「舞美は軍に入ったらどんな兵士になるの?」
「へ?…なに言ってるの?」

「いいから、答えて」少し強めの口調でそう言った。
「…国を守る、立派な兵隊さんに…っ、えり?」

そう、言い切る前に思いっきり抱きしめた。

「…ほんとうに?」
「あたりまえだよ」

「そっか、ならいいんだけど」
「えり?…何が怖いの?」

「…お見通しだったか」
「あったりまえ 笑」

「絶対…絶っ対、死なないでね」
「もちろん!」



そう約束して、舞美が予科練へ入隊した、その日
私は整備兵として軍隊に入隊した。





つづく

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