春一番 完結

□春一番 8
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絵里、れなは幸せだったっちゃよ?

運命を呪うしかできないよ




【春一番 8】




絵里視点


絵里達の神風特別攻撃隊も随分減ったなぁ
それだけ、仲間が散っている証拠だけど


絵里の番はまだ来ない
れいなの番もまだ来ていない


確認するたびに怖くてたまらない
れいなの名前がないか真っ先に探してしまう


そして、自分の名前を探す。



「絵里〜散歩いかんと?」
「おぉ、いいねぇ♪」

珍しく、れいなが誘ってくれた散歩で
ウキウキしていた。


「梅が綺麗っちゃね」
「うん」

「香りもいいと」
「絵里も好きだなこの匂い」

「にしし、やっぱり、実感ないけんね」
「そうだね」

「今、生きて春の訪れを実感してると」
「うん」

「まだ、生きれる気がして仕方がないっちゃ」
「…」

「えり?」
「そんなこと…言わないでよ」

「ご、ごめん」
「うんん、えりもごめん」


なんか、のんびりしすぎて
これから、死ぬんだってこと忘れて

現実を見るのが辛くてたまらなくなってくる
春の訪れを知らせる梅の満開はとても綺麗だった。


でも、絵里はれいなの心をまったく理解できていなかった。
だから、きっと天罰だったんだと思う。



れいなは辛くないはずなかったんだ

人一倍、さみしがりやなくせして
必死に隠して

それに、気がつけなかった絵里はどうしようもない奴で
れいなも、戦争で親が居ない


れいなの育ての親は藤本さんだった


その、藤本さんを失いそれだけじゃなく
れいなはいろいろ我慢していた。

それも、感づかせないくらいに完璧に


そんな日常に一通の手紙が届いた。
それはれいなにも来ていたらしく。

2人で開けてみることにした。


差出人は愛ちゃんで



この手紙は遺書で届いたということは
もう、行ってしまったという事

手紙を読んでいるれいなは
見たことないくらい無表情で

絵里も手紙に目を通した





「えりへ」


これを読んでいるということはあーしは成功したんやなぁ
ごめんのぉ、最後のわがまま聞いて欲しい。

あーしは家族と藤本小隊に手紙を残すことにした。
だから、この手紙最後まで読んで欲しい。

絵里、意地はらずれいなのこと見てあげるんだよ。
こんな、ご時世でなければよかったのぉ

願わくば、別の出会い方をしてみたかったやよ。
えりやれいなガキさんにみきちゃんさゆにも

あーしは一足先にいってるがし
そして、これはあーしの願望

えりはまだ生きて欲しい
運命に逆らってこっちへはまだ






そこで、途切れていた
これ以上はかけなかったのかも

あいちゃんらしい泣けるような手紙を送ってくれて
嬉しい半面、もう、今のまま会えないのかと思うと切ない


れいなも読みおえていて絵里をみていた。

なんとなく、流れで交換した手紙
お互い気になったかられいなのを見せてもらって

えりのを渡した





「れいなへ」



これが届いてるってことはあーしは居ないんやね

こんな手紙送りつけてごめんやよ
だけど、最後のわがまま聞いて欲しい。


れいなともう一度話したかった。
あいれなと呼ばれたあの日々忘れないがし。


れいなはれいならしくまっすぐ生きて欲しいやよ。
あーしはそれを願ってる。


まっすぐなれーなあーしはとても大好き。
えりには負けるけど。

れいなのこれからを願いたいけどきっと
今はダメやね。

こっちへ来るなと言いたいところやけど
難しいのもわかってるがし。

れいな、溜め込んでいたのもわかってたやよ。
こっちへきたら、たくさんいい子いい子してあげるがし。

でも、来ないことを祈ってる。




そこで終わった手紙
もしかしたら、全部内容違うのかも

お茶目な愛ちゃん
手紙のとおり生きれたら

でも、みんないないのにここまで来て
生きていくのもなんか嫌だ

れいなだけでも生きて欲しい。


ガキさんからは来ていないから
生きている、それがホッとした。



でも、絵里たちがどこにいるか
今、何をしているか

それを、実感する時がとうとうやってきた。



れいなのいる部隊の出撃命令が出た。





つづく

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