春一番 完結

□春一番 7
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愛ちゃん、また会おうね

もちろん、絶対やよ




【春一番 7】



里沙視点


私たちは一足先に列車で基地に向かった。
いつもより騒ぐ隊員たち

でも、気持ちがわからなくもなかった。
なんか、麻痺するのかも


「いつもより、騒がしいのぉ」
「うん、列車移動って珍しいしね」

「そうやなぁ」
「…潜水艦か」

「怖い?」
「まさか、わくわくしてるよ」

「ほうか」
「うん」


そう、いい黙って外を見ていた愛ちゃんは
今思えば何を考えていたんだろう。



私より先に行った愛ちゃんは
見事、撃沈させたと知らされて当たり前だけど


そこで初めてこの作戦の内容を知った気がした。


列車に揺られ軍トラックに揺られ
3日かかった旅は終わり

自分の棺桶の操縦方法を叩き入れられる日々が
始まった。

せっかく、行っても出ない自分の名前
どんどん行ってしまう戦友たち

仲間が日々帰らぬ人となって散って逝く



「ガキさん、ごはんいこうやよ〜」
「うん」

「早く、名前でないかなぁ」
「愛ちゃん」

「ん?」
「カメたちはもう行ったかなぁ?」

愛ちゃんの表情が変わったのがわかった
けど、私はポロポロと止まらなかった。

「里沙ちゃん、今夜、2人で話そう」
「…うん」


「とりあえず、ご飯や!」
「うん、なくなっちゃうもんね」


愛ちゃんとご飯をもらって
しっかり、食べた


その夜


「里沙ちゃん」
「ん?」

「やっぱり、怖いんやろ?」
「そんなわけないじゃん」

「ほんとけぇ? 笑」
「本当だってば…愛ちゃんの方が怖いんじゃなの?」

「あーしは怖いよ」
「…」

「怖くないって言えば嘘になる」
「あいちゃん?」


「殴られても罵られても…怖いもんは怖い」
「…」

「言う人は選ぶべきやけどな」
「うん」

「恥ずかしい事ではないんやよ?」
「自分が死ぬより仲間が死ぬのが怖いの」

「うん」
「散って逝く仲間はもう会えないんだよ」

「大丈夫、きっとまたいつかあえるやよ」
「…うん」



なんか、不安だった
それを愛ちゃんに見透かされて

安心もさせられて
悔しいけど


年上の余裕があった。



それから、一週間後
愛ちゃんは逝った



成功、英雄になった。



そして、私の番は終戦間際に
名前が出て出撃はないと思われた。


私は船の上で終戦のコメントを聞いたのだ


「もう、だめだ」
「このまま、撃沈させられるのを
待つのですか?」

「どうしようもないんだ」

水が漏れてきて
絶体絶命ってこういう時に使うのかな

「私が、私が回天で出て体当たりして引きつけます」
「ダメだ、そんなこと認めない」

「…もう、これしかないんです」
「…」

「行かせてください」
「でも、戦争は終わったんだ…死なせたくない」

「では、皆死ぬのですか?」

もう、終戦したにもかかわらず攻撃されているのは
まだ、聞いていない敵軍のせいだった

終わったのに

悲壮感が漂った船内にでた光だ
私が行けばみんな助かる

みかた、からの知らせが入っていない
敵は脅威でしかない



「すまない…出撃命令だいってくれ」
「はいっ!ありがとうございます」

そう言って敬礼して

猛ダッシュした。


すぐさま乗り込み
教えられた、訓練同様動かし

怖かったけど、愛ちゃんやカメ、田中っちに

さゆみん、もっさんがいるなら怖くない気がした


「愛ちゃん」


しばらくして、コンっという音がして
爆発音がした


ガキさんが乗った潜水艦の船員は
皆助かった。




つづく

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