春一番 完結

□春一番 5
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絵里は認めない!

れなは絵里を守る風になりたいと



【春一番 5】



絵里視点



本部に戻り、少し落ち着いてきた頃
人間は欲望にまみれてると言うけど本当なんだと


思い知ったのはつい最近だった。


絵里はさゆや藤本さんを失ったことに
心が拒否を始めたけど


現実が見えるとれいなじゃなくて良かったと
安心した自分がいた


冷静にならなければ見えなかった
影の自分は自分自身に大ダメージを与えたのだ


「絵里…」
「れいな?」

「みきねぇもさゆも次は幸せになれるといいけんね」
「…うん」


藤本さんはれいなの義理の姉だ
だから、絵里も顔見知りだったんだ


さゆは配属されてからずっと仲良しな親友
いっしょにシバかれることも多々あったし 苦笑


苦楽を共にした仲間だ


絵里だけじゃない
みんな、表情が暗かった。


でも、敵は待ってくれない
絵里たちは敵を取るかのように


殺すことだけを考えた。


「かめ…」
「あ、ガキさん♪」

「かめ、話があるの」

妙に暗い顔

「愛ちゃんと私は」

言いよどんだ下唇を噛む影のある顔

「回天搭乗員になった」
「…それって特別攻撃隊になったってこと?」

「そういうこと」
「いつ、いつ決まったの?」

「先週だよ、藤本少尉が反対してたけど
戦死したから決行されたらしい」



少尉(あ、昇級していて今は大尉)は防波堤になっていたんだ
そんなことに今更、気がついて

嫌とも言えず、絵里は軍人だから


「見事な体当たり期待しています」


無理やり笑って絵里は頑張ったけど涙は止まってはくれなかった。


「かめ、ごめんねかめ」
「謝んないでよぉ…」

ガキさんがふわりと抱きしめてくれた

「えりの部隊も今日応募あるのかも」
「え?」

「今夜、集合命令でてるし」
「そっか」

「ガキさんたちはいつ行くの?」
「来週」

「じゃー結果出たら」
「うん、待ってるね」


「あれ、愛ちゃんとれいなって同じ部隊なはずじゃ」
「あれ?聞いてないの?」

ガキさんは知ってるっぽい?

そう、実はガキさんもえりと同じ部隊だったけど
先月、れいなたちの部隊に配属されていた


「知ってるの?」
「本人に聞いたほうがいいよ」

「…」
「そんな顔しないの 笑」


その夜

見事、予想通り絵里のいる部隊も応募があった
何が、強制じゃないだ

おもいっきし、強制じゃん

でも、れいなのことが気になって仕方なかった


真夜中、抜け出し

「れいな」
「え、えり?!」

「ちょ、声大きい 汗」
「ご、ごめん」


「れいなに、話があるんだけど」
「なに?」


さゆと話をした見つからないであろう
原っぱまでやってきた




「なんで、ここんとこ休憩来ないの?」
「…忙しいと」

「…」
「えり?」

「れいなは…特別攻撃隊員じゃないよね」
恥ずかしいけど…声が最後震えてしまった

「…」
「れいな?」


「れなは神風」
「え?」

「れなは神風特別攻撃隊やけん」
「…」

まさかの予想は的中だ
ガキさんが愛ちゃんと2人って言ったし

れいなのことはふせようとしてたから
やっぱりなって感じだ

「えりは?」
「絵里は…」

「神風だよ」
「…」

「予科練出身は主要になるらしいね」
「ごめん、絵里…ごめんっちゃ」

「へっ?」
「受けなければ…よかった」

そのあとれいなの口から出た言葉は吃驚するほど
素直な優しい言葉だった。


れなは絵里を守りたかっただけっちゃん



でも、残酷な運命はこの後動き出す。






つづく

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