戦姫〜千年華〜

□戦姫〜千年華〜7
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洞窟を抜けると広がる大地。
そこはもう修羅と化していた。


【戦姫7】



いろんなところに落ち武者やらなんやらが散らばっている
お城の外は私の予想を遥かに上回るひどさで


逃がされたところで
先は…見えてる。


「ここにいては危のうございます」
「きっと、どこにいても危ないよ」


黒が危ないという。
私は投げやりな答えを出したかもしれない。

けど、黒はあきれていたみたい。


「今度の主人は随分と命知らずですね」
「…何がいいたいの」


頭巾とマスクでみえない。
だけれど、呆れながら笑ったような気がしました。


「守りがいがあると申しました」
「では、私は黒を守りますね」


ただ、なんとなく思ったことが口から出ただけなの
そんな言葉が黒を赤面させることになるなんて思わなかった。


「頼りにしてます、愛理様」
「私も黒を頼りにしています」



そんなやりとりをしたのも
もう、数日も前のこと。



























奥州の平泉はまだ敵の手も伸びておらず
収めてる人物が相当な権力者だと聞いた。

戦にかかわらず生きるには最適な地だとそこに定めた。


今は、そのための移動手段を話し合っている。



「馬で飛ばせば…5日くらいでしょうか」
「…隠密って馬乗れるの?」


「基礎は出来ています」
「それなら、早くつけそうですね」


落ち武者から弓矢を拝借し
馬の調達に向かう。



木陰に隠れて機会を伺う。


「…何も殺さなくても」
「こんな乱世、使われていない馬などこのへんにはありません」


そういい弓を構える黒に倣い同じく弓を構えていると
3頭程人を乗せた馬が見える。



「愛理様、あれを狙いましょう」
「う、うん…」



黒の言葉に従い狙いを定める。
あの千聖にお褒め頂いた唯一の特技


これだけは…誰にも負けるなんて
少しだって思ってはいなかったんだ。



「愛理様っ?早く弓を引いてください」



ちっとも、思ってはいなかった。
けれど、本物の戦ってものも私は知りはしなかったんだ。

手が震える。


人を殺めるのがこんなに怖いなんて思っても見なかった。


震える手で精一杯の力を振り絞った矢先はあっという間に失速し
敵に気づかれてしまうという大失態に終わった。



「愛理様っ!走ってください!!」
「く、黒っ!」


目の前を風のように通り過ぎていく様は
夢か現か私を惑わせるかのようで


血飛沫と馬に乗った黒に一抹の不安を感じたのは


ここだけの秘密です。




つづく

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