ハロー開拓史

□ハロー開拓史 2
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降り立ったその地は見たこともない
生物が暮らす豊かな星だった。



【ハロー開拓史 2】



発射したその一時間後くらいに鈴木さんの声が聞こえた。
時空嵐を避けるため飛行位置を変更すると連絡がきて


その直後、緊急音に場が騒然となった。



「こちら、℃-ute号鈴木です!時空嵐は想定より百キロ程ずれて
機体は半分ほど飲まれています、至急応援の要請を願います」




その報告後、機体はレーダーから消えたんだ。




すぐに別のチームが呼ばれてすぐに飛ばされることになった。
あっという間に揃ったそのチームワークはさすがハロー所属



「いいか、お前たちにかかっているんだ、意地でも℃号を連れ戻してこい!」




沢山の気合の入った声にかき消される緊急音。
うちらにも、なにか出来ないだろうか…。

こんな新人では…使えはしないのかもしれないけど。



「あの」


だけど、うちのリーダーは一味違う。


「私達も役に立てます、同行の許可をお願いします!」



司令官の数時間にも及ぶ説得も意味を成さず
ゆかちゃんのおかげでうちらの初発射が決まった





――――――――――――――――――――






廊下をコツコツ歩いていくと行く手をドアに塞がれていた
けど、この通路には緊急用のドアを破る道具がいくつもあるから問題ない。


個室と食料倉庫を破って軽くバックに食べ物を詰めて
私はコンピュータールームへ向かった。


「愛理ー!なっきぃー!きづけー!」ばんばんっ
「あー!たすけてー!!」ばんばんっ


案の定、閉じ込められたみたい。
電気が通っていたのはコックピットだけだったんだ。



「千聖?舞?」


「なっきぃ!?なっきぃ!」
「今、破るから少し離れて」


静かになったドアに鉄パイプを挟み込んで
無理やりこじ開ける。


やっぱり、内側にもこういうのつけるべきだよね…。
だって、こういうふうに内側から閉じ込められたら

一巻の終わりだし。



無事、帰還できた折に相談しておこう。




開けたドアから覗いたのは、真っ青な顔したリーダー
不安げな顔を通り越して今にも倒れてしまいそうで


「リーダー?」
「なっきぃ…」


ふらふらっとしながらこっちへ歩いてきたと思ったら
がしっっと肩を掴まれてガンガン揺さぶられる羽目になったのは

ご愛嬌…だよね?



「どうなってんの!?さっきの揺れなに?愛理は…どこ?」
「落ち着いてリーダー、時空嵐に巻き込まれたの」



更に青くなって…いや、白くなった?



「嘘でしょ!?時空嵐に飲まれて無事だった機体って…」
「そうだけど、現実飲まれたから…この目で見ちゃったし」


みんなで黙り込んでしまって、ここにいるメンバーは
養成機関を出ているから当たり前だけど

現状把握に時間は要さないんだ。



「とりあえず、愛理のとこ行こう」
「うん」


































初めて乗るスペースシャトルは想像と違い
あの大それた感はなかった。


「エンジンok」
「ブレーキok」

「倉庫のチェックも終わりました」
「ありがとう!」

「衛生からの信号をキャッチ」
「全ての準備整いました」



張り詰めた空気の中、震える手でベルトを締めたことだけは覚えてる。
ゆかちゃんがさっと助けてくれて

それだけで、上の余裕ってやつを見てしまった気がして
悔しかった。


「座標確認、入力完了」
「じゃぁ、みんなしっかりベルトしめた?」



キャプテン清水さんの確認に
大きく返事をした瞬間。



「いくよ!ベリーズ号、飛びます!」



思い切り拳を振り下ろして赤いボタンをたたくように押したんだ。





そして、うちらは宇宙へと飛ばされて行った。









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愛理と合流してわかったのは出来る事はしたって事と
食料はギリギリだって事だった。



「…こんなんじゃ三日と持たないね」
「まずいね…」

「時空嵐に入った時点で終わってるようなもんだから」
「それもそっか!」

「それ、しゃれになんないけどね」



愛理の苦笑いでみんなとりあえず笑ってたけど
不安でたまらないんだろう


千聖や舞やなっきぃは手が震えてる。




こんな事は初めてだけど、それでも
昔の私なら…どうにか出来たんだろうか。


あの頃の私は、どういう対処をしたのだろう…。



そんな事を思ってから早三日。



杞憂していた、食料はまさかの二日で尽き
今朝から一滴の水と格闘していた。





「…このひと箱で終わりだよね?」
「うん、だから均等に分けようと思って」



1箱に水は2ℓペットボトルが6本。
だけど、そのうちの一本は食事で消えているので


実質、五本分のみ。


「水、一本でどれだけ持つものなの?」
「うーん、一日1舐ならかなりもつんじゃない?」


みんな、呆然としてたけどそういう世界になってるんだもんね
なんだか、ピンとこないけど。


「さすがに、そんなの持つ訳無いじゃん」
「うん、私もそう思う」



とうの本人もそう思っていたようで。
ピリピリした空気がつづく。




とりあえず、解散となりみんながバラけた瞬間の事だった。




「みんなっ!なにかに捕まって!!」




ぐらりと小さい揺れの後



本震がやってくる。


入った時よりも大きな揺れに捕まっていたはずの手が
滑って外れて中を行ったり来たり



「ま、舞ちゃん!?」



千聖の声に後ろを振り向けば飛ばされた舞を庇って
二人で意識を飛ばしていた所だった。




まいったなぁ…なんて思った瞬間にはなっきぃが飛んできて
私の目の前も真っ暗になったんだ。








つづく

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