ハロー開拓史

□ハロー開拓史 1
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いつものことだった。
当たり前が崩れたのは、ほんの一瞬の出来事。



【ハロー開拓史】



その日は℃-ute号の発射日で
新人の私達に発射の瞬間を見せてもらえると

はりきってミッションコントロールセンターで
待機をしていた。


「カウントダウン入ります!」



その一声で更に忙しく動き始める人達。




「3」


「2」


「1」


とうとう、念願だった場面に出会える。
胸が躍るようなそんな感覚


「発射っ!」


ボタンを押した瞬間大きな音に包まれて
予想以上の迫力にうちらは開いた口が閉じないくらいの衝撃だった






























重力を安定させてからベルトを外して
軽く機材確認。

全てが命に関わるからね。



「この押される感じほんと嫌いなんだよね」
「まぁまぁ、でも無事に出れたわけだし」



これから宇宙ステーションに寄って荷物を受け取ってから
メディウスって惑星へ行く。


開拓星で人が住めるようにするとかで頻繁に足を運んでいる。




「こらー!直後確認してきなさい」
「「はーい」」



おとなしく確認に向かった千聖&愛理とすれ違いにリーダーへ



「リーダー、変更点が来てるよ」
「ごめん、読み上げてもらえる?」



修理道具を器用に使いこなしながら
狭いところに入って線の繋ぎ直しをしているリーダー。



「時空嵐が発生してるため、進路変更の後、報告せよだって」
「了解、愛理にお願いしてもらえると助かるんだけど」



すごく、申し訳なさそうに言うリーダーに肩をぽんっと叩く



「わかったから、リーダーは最後に頭気をつけてよ?」
「わかってるってーほら、行った行った」



今でこそあんなに優しそうだけど最初はすっごく固くて
なによりも、気負っていて…痛々しいくらいだった。


唯一昔と変わらない面があるとすれば
発射の時と地球に着陸する時だけはあの頃のまま。






それでも、今があるのは





「愛理」



この子のおかげだと私は思っている。





「どうしたの?チェックならもう」
「わかってるよ、変更点が出たの」



書類を渡すとふがふがいいながらぽぽんとキーを押していく。



「んーこれでいいかな、じゃぁ報告しちゃうね」
「うん」


「こちら、℃-ute号鈴木です、変更完了の報告をいたします」
「了解、そのまま通過して異常がなければ元に戻すようにとの事」



こういう時は愛理がすっごく頼もしく見える。
普段は…ぼやーってしてるからあれだけど。



「了解、ではそのまま飛行継続します」



そのままボタンに手を伸ばして通信を切った。



「お疲れ」
「報告ってなんか未だ緊張するんだよね」



困ったように眉を八の字にして言う姿はいつもの愛理だ。



「でも、かっこよかったよ」
「ふへへ、ありがとぉ」





そう、宇宙飛行士なんて今はよくある職業だし
緊急事態だって何度も乗り越えてきた。

怠慢だったんだと思う。
自身の力を過信すらしてそれがこんな結果を招いたんだ。





「えっ!?なんでっ…作動しないっ!」
「どうしたの、愛理」



緊急の装置が作動して鳴り出す。


激しい揺れにも動じず愛理は必死に制御を取ろうとして
私も手動切り替えに手を伸ばそうとしたその時だった。


大きな黒い穴に入っていく様が見れた。



「あ、愛理…あれって」
「…舞美ちゃんに報告…いや、先にセンターだよね…」



震えた声の愛理にリーダーのへ報告を頼まれた。



「ごめんね、よろしく」
「わかった、気をつけるんだよ」


一拍あった、ほんの少しの間だったけど
すぐにふにゃって笑って


「何言ってるの、なっきぃの方こそ揺れ大きいから気をつけてね」
「ありがとう、行ってくる」



元に戻るのは私も見習わなきゃな。




―――――――――――――――――――――――――





「制御不能!リーダーそっちは!?」
「ダメ、ドアは開かないっ」



急に大きな揺れを確認してすぐドアが開かなくなった。


愛理、なっきぃとコンタクトすら取れず
緊急のベル音は聞こえたけど体制を取る間もなく

今に至る。



「ってか、ここってコンピュータールームだから逃げ道ないよね」


ちっさーの一言に舞も私も固まる。


設計上、食料倉庫にもコックピットにも

各自の個室にだって…このドアを通じて繋がってるから
正直、絶望的だったりする。



「愛理にも繋がらないし…最悪ここで餓死?」
「ちょっと、舞ちゃんシャレになんないから」


舞にツッコんでるちっさーはとりあえず放っておいて
もう一度、愛理に呼びかけてみても


機材はうんともすんとも言わず…。
こんなことになるなんて思ってもいないから

食料なんて今夜の分もない。



「なっきぃ!愛理!気づけー!!」
「あー!たすけてー!!」


いつの間にか今度はドアを叩いて助けを求めることにしたらしい。
無駄だよね、よっぽど近くにいなきゃ聞こえない


機材をあけて直すほうがきっと何倍もはや…



「なっきぃ!?なっきぃ!」
「ここ、あけられる?」



二人のテンションが上がった声がして
振り向けば、ちょうどドアを外から開けてくれていたなっきぃと目があった。



「リーダー」
「…なっきぃ」








つづく

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