ハロー王国    完結

□10話
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仲間が一人づつ消えていく。

聲は届かなくて彷徨っては消えていくの





【あの国の聲】





景色が変わってそのまま倒れこんだ室田ちゃん。



「はぁはぁ…」
「どうして、こんな無茶を…」


顔を地面につけているから
汚れないようにと抱き起こしてあげると


息を上げながら泣いていた。




「ごめん、な…はぁ…はっ…さいっ」
「ちょっと、落ち着いて、どこかまだ痛む?」




そういって背中をさすってあげるとしがみついて泣き始めた。
なにがどうしたんだろう…そういえば…なんでなっきぃは静かなんだ…。




「ちょっと、なっきっ…!え…なっきぃ…?」
「すいませんっ…間に合いませんでした…ぐすっ」


二人で添うように倒れこんでいて。
それも、どっちも血を流していて…。



「そんな…返事しろよっなっきぃっ!!」



思うように動かない体を引きずって
2人の元まで向かう。



「おきろっ!ふざけんな、なんでそうドジなんだよお前!!
起きろ!寝てるなんて許さないからな!!…頼むから起きてよ…」




どんなに揺さぶってもぴくりともしない二人に
どうしていいかわからなくて

ただ、わかったことは体温が急激に失われていっている
事だけだった。




「岡井さんっ!」
「…」


「しっかりしてください、岡井さんっ!!」
「っ…!」




肩をつかまれて。
揺さぶられる。



「私たちはまだ生きてますっ!
まだ、やらなくてはいけないことが残っていますっ!!」
「なにが…出来る?元の待機場だってあの武器で攻められていただろ」



そうだ、だから…中間守備に居た仲間は全滅している可能性が高い。




「…それは…」
「あそこがやられていたんだ…前線は確実に出回ってるよ」




腕に抱いていた二人が光始めた
サラサラと砂のように光が粒となって散ってしまった。



「えっ…そんな」
「千聖達はお墓必要ないんだな…」



初めて目の前で直面する仲間の死。
動揺も困惑も今は捨てなければいけない。



「…岡井さん?」
「二人に会いに行こう、出来ることはしないとね」



そうだ、腐ってる暇はないんだ。
成長した愛理が簡単に諦めるはずないっ!


「はいっ!鈴木さんと矢島さんに会いにいきましょう!」



そういって、手をとってくれた。
そして、なっきぃと舞が消えた場所から





愛理とリーダーの下へ飛んだんだ。

















































人間の表情が変わった。
自信に満ちた…うんん驕り高ぶった態度にすら見えた。



「…舞美ちゃん、なんかおかしいよ」
「おかしい?」



撃たれる前に撃っているからなにがかはわからないけど
確かに何かが変わった。



そして、目の前にいきなり現れた千聖に思わず銃を向けたら
舞美ちゃんがえらく驚いていたっけ




「危なっ!」
「ご、ごめん!」


慌て過ぎて前が見えてすら居なかった私に現実を知らしめたのは
舞美ちゃんの生気のない声だった。



「千聖…?」
「なに?どうしたのそんな顔して」



転びそうな勢いで千聖の方へ走って
恐る恐るとでもいうような手つきで頬を包み込む。



「ど、どうしてそんな傷で立ってるのっ!ほらっ座って!」
「そんな暇はないよ!っ…!ここも危ない、場所を変えよう」



室田ちゃんがとてとてとこっちへやってきて
手をつながれる。



もしかしたら、私が感じた不安は…千聖が教えてくれるかも知れない。



「鈴木さん力を貸してください」
「うん、もちろん!」


舞美ちゃんと千聖を思い切り抱きしめて
大きな山の頂まで飛んだんだ。



「いったぁ…」
「愛理大丈夫?」

「うん、大丈夫。それより…どういうことその傷」
「愛理?」


転がってる千聖を起き上がらせてあげると
気まずそうな顔をする。


ここなら、時間をかけられる。
人が立ち入るにはずいぶんと過酷な環境にいるから。


「…なにがあったの?」
「ごめん…リーダー、愛理」



ただ、謝るだけで顔すらも伏せられて
胸に広がるもやが広がっていく。



「人間に優位な情報でもあるの?」
「な、なんで知ってっ…!あ、いや」



もしかしたら、私が思う以上に現状は最悪なのかもしれない。




「ちっさーとりあえずさ傷だけでも塞ごう?」
「うんん、必要ないよ」


「なんで?それじゃぁ動くことすら出来ないでしょ!?」
「愛理ならわかるだろ?この傷は治らないから報告を聞いてほしい」



苦しそうにこっちに歩いてきた千聖を支えると
さっきよりも傷が広がってる…。



出血もかなり酷く、意識があるのも通常ではありえない。
よっぽどなにかを伝えたかったんだとひしひしと感じる。



「…守れなかった」
「え?」



千聖の言葉に室田ちゃんが苦しそうに顔を背けた。



「人間は千聖達を人間並みに殺せる武器を所持してる…
この傷もその武器の攻撃を受けたんだ」



千聖が言うことが一瞬理解できなくて。



「この傷は掠っただけのものがこうなっていってるんだ
なっきぃに見てもらったけど塞げてもすぐに悪くなっていく」



掠った…?
どうみても、刃物で刺された後に回されてるような

えぐられたような状態にしか見えない。



「うそでしょ…?いくらなんでも掠り傷には見えないよ」
「でも、本当だからしょうがないだろ」



その後だった、泣いたり怒ったり笑ったり表情豊かな千聖の
こんな顔を見たのは初めてだし


なにより、こんな顔するんだって驚いた。




「なっきぃと…舞ちゃんは…」
「二人がどうかしたの?」


「頭と胸を撃たれて即死した」
「え?…そんなの私達をだまそうったって…っ千聖!!」


「本当なんだ!!目の前で…撃たれて冷たくなって消えた」
「そんな…」




さっきから一言も発していない舞美ちゃんが私の肩に手をおいた。




「ちっさー…わざわざありがとう」
「うんん、それが千聖の最後の役目だからさ」



舞美ちゃんに頭を撫でられて嬉しそうに笑う
そんな、千聖を見たのはいつぶりだったんだろう…。



「だからさ、逃げてよ」
「に、げる?」



本当に言いたかったことはこっちなんだと
思ったのはもしかしたら、千聖のこの話をしていたときの


表情だったのかも。



「勝てっこない…愛理と舞美ちゃんは失いたくないんだ」
「そっか…ありがとね、ほんとうにありがと」



そういって、苦しそうに立っている千聖を引き寄せて
抱きしめた。



「千聖はみんなのための無茶ならいくらだってするよ
だって、舞もなっきぃも愛理も舞美ちゃんも、家族だからさ」



舞美ちゃんの腕の中にいる千聖にでこピンをくらわしてやった



「いだっ、おいっ」
「まったくさー自分を大事にしなよ」



千聖は少し馬鹿にしたような顔で私を見て笑った。



「もう、迷うなよ。で、絶対死ぬなよな」
「なに、言ってんの。もーっ…大好きだよ千聖。ありがとね」




苦しそうな顔をしていた千聖が私の言葉に
一瞬吃驚して、すぐに無邪気な笑顔を見せてくれた。



そして、そのまま呼吸が止まったんだ。

千聖は、光となって消えてしまった。




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