ハロー王国    完結

□9話
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痛みも苦しみもすべて受け入れる。
それが、私が決めた覚悟





【ある国の正義】





「っ…!!」




痛いだけ。
意識すら飛びはしなかった。


近くで声がする。




「死んだか?」
「胸を貫通してるんだから生きていられるはずない」





…あれ?私達の体質を知らないみたい。
なら、やりすごせるかも知れない




と、言うのは甘かったんだ。





「それは人間に適応するルールだ、こいつらは殺し続けて
はじめて死ぬ、そう簡単にはしなねぇさ」
「そうなのか?」




逆を返せば、知っているというのは仲間の殺戮に
携わった人間。


身体に力を入れて起き上がると悲鳴が聞こえた。




「ひゃぁああ!」
「グレーのならず者共がっ!」




構えられる銃。
だけど、向けられてるのは私ではなく舞美ちゃんだった。




「おまえか…お前が栞菜をやったのかぁあ!!」
「ま、舞美ちゃん、おちつ…っ!」



振り落とされて猪突猛進ぶりを発揮する。
飛び道具に勝てるわけないじゃない!?


身体は勝手に動いていた。




「愛理っ!あ、あいり…」
「うぅ゛…はぁ…」




何発か身体に撃ち込まれて意識が飛びそうな感覚を
初めての体験中。


けど、まだ、私にはやらなきゃいけない事がある。



舞美ちゃんの戦う意味はここだから
倒れるわけにはいかない。





「起き上がっちゃ駄目だよっ愛理っ!」
「大丈夫…それより、こいつら、野放しには出来ない」






男を見据えると少し怯んだような目を向けられる。
身体を少し動かすと面白いくらいに普段と変わらない。



痛みが強すぎてくらくらはするけど
放電を始めると体中に電気が走る。


痛いけど、こうでもしなきゃ
長い時間はかけられないし







「…はぁ、はぁ…つっ!」
「愛理、下がって。そこで座ってなさい」



真剣な顔で言われる。
でも、その裏には心配と不安とおびえが混じっていて。



「いっ!あ、愛理っ!?」
「はぁ…そんなこと言う舞美ちゃんには電気ショックだー」



そういって、全力で雷を巻き起こす。



「え?えぇえ!?」
「あとは、お願いっ」




座り込むとにっこりと笑いかけてくれた。
痛かったけど、あのくらいしてもいいかなって思ったし


なにより、あんな雷が混じった竜巻に飲み込まれるどころか
触れた時点で人間の身体じゃ瞬間的に焦げ付くに決まってる。



目を閉じれば風と電気のばちばちという音。
あと、悲鳴。






それと、耳元で小さく聞こえた




「愛理」





優しい声。






「…舞美ちゃん、おわった?」
「うん、ありがと、すぐに終わったよ」



そういって抱きしめてくれようとした舞美ちゃんに
しがみついて抱きしめる。



ちゃんと、あったかい…ちゃんとドクドクと音がする。



「もう、大丈夫だよ…痛む?」



返事をする前になっきぃたちの所まで飛んだんだ。

























































「愛理っ!愛理!!」
「リーダー?…え」



不安定な状態で飛ぶとどうしても変な位置から出てしまう。
場所はドンピシャでも高さがまずかった。


体が思うように動かなくてそのまま落ちれば
舞美ちゃんが抱きとめてくれた。




私の意識はそこで途切れてしまった。






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舞と少し暇な日常を過ごしていた。
遠くで聞こえる音さえなければ気づけないくらいに


いつもと、かわらない。




そんな中、舞の様子が変わった。




「なっきぃっ!」
「へっ?」



舞が口を開いたその瞬間、空間が歪んだ。
ナカジマでも感じれるほどはっきりわかって



やじと愛理が落ちてきた。





そして、今に至る。



それにしても、酷い。
普通なら飛ぶなんて無理



「なっきぃ…愛理」
「大丈夫…全部貫通してるから」


傷をちゃんと治す事はできないけれど
患部一つ一つに手を当てて



言葉のまま手当てを施す。
痛みはとってあげられるし


穴が開いてればえぐれはしていても
ふさぐことは出来る。



「いっ…なっきぃ、もう少しやさしく…」
「無謀な子のいうことは聞きません」



そういって最後の傷口に手を当てる。
少し強めに。



「うぅっ…いたいぃ」



少し前を向くとやじが心配そうな顔で見ている。
…本当にこの二人はなんでこうも無茶ばかりでこっちの

心臓に毛でも生やす気なのかな!?




「じゃぁ、次はやじ…やじ?」
「私は大丈夫だから!愛理を運ばなきゃ!」


そういって、愛理をおぶろうとしていた舞から
愛理を乗せなおしてすごい速さで城の中へ入っていった。



「とりあえず、中、戻ろうか?」
「うん」



どこの部屋に行ったか
とてもわかりやすく通った痕跡が残っていた。



「舞美ちゃんかなり出血してるね」
「ほんとに…こんなことしてたら命がいくつあっても足りないよ」



ドアを開けるとベットに身を預けてる愛理と
その横で意識を失ってるリーダーの姿



「言わんこっちゃない」
「舞美ちゃんらしいけど」



リーダーの手当てをしているとすぐに起き上がってきた愛理。
さすがにやっぱり早い。




「いたたっ…ありがと二人とも」
「さすがに少し怖かったよ」


舞が声をかけてる横で愛理に近づくと
ビクビクされる。


「そんなに怖がらなくても」
「お、怒らない?」

「叱りはしても怒りはしないから」
「よかったぁ」



そういう愛理の背中に手を当てる。
そのまま、胸の辺りに動かして



「なっきぃ?」
「うん、これなら動けるはず」



そういうとぱぁっと明るくなった。



「ほんと?ありがとうなっきぃ!」
「でも、無茶はだめだからね?」




そういっても舞に抱きついて騒いでるから
聞こえてはいないだろう…。





「翼は治せないからね二人とも、特に愛理」
「へっ?あ、うん。わかってる」



やじの翼に手を当て直し穴をふさぐ。
このくらいなら飛べはするだろうけど痛むのは確実だし


愛理にいたっては半分は使い物にならないレベルで傷ついてる。
一体、どうしたら、こんなことになるんだろう…。




「前線はそんなに激しいの?」
「ん〜まぁ前線っていえるくらいには激しいかな」




パンをかじりながらぼんやりという愛理に
その激しさは感じられなかったけど傷をみれば


そうなのかもしれない。



「ほっとみるくは暖まるねぇ」
「ホットチョコはやじ駄目だもんね〜」



相変わらずいちゃついてるから
とりあえずは大丈夫そうだし、私たちはいつもと


かわりなくやるしかないよね。






マント以外は新しくして
食料も薬も持たせたし。




「忘れ物はない?」
「うん、大丈夫!」



血塗れのマントを翻し2人は戦場へ戻っていった。




「…千聖大丈夫かな」
「室田ちゃんが無茶を止めてくれるよ…きっと」



言って二人で顔を見合わせる。
心配ごとが増えるけど



「信じるしか…ないね」
「ナカジマ達だっていつそうなるかわからないし…気は抜けない」




その頃、人間は最終兵器を開発していた事を知ることに
なるのはまだ、もう少し先のことでありました。




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