ハロー王国    完結

□8話
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綺麗な灰色の羽。
降り出しそうな空模様にとてもよく似ていた。







【ある国の願い】







飛んですぐ、道重さんと鞘師ちゃんが見えた。



「お疲れなの」
「「お疲れ様です」」


少し遅れて鞘師ちゃんが、がちがちの状態で
挨拶を繰り出した。



「お疲れ様ですっ!」



それを、いつもの顔で頭を撫でてあげる舞美ちゃん。
それに釣られて緊張が解けてきたように見える鞘師ちゃん。




さすがだと改めて思う。




「あと、五分したら攻撃を開始するから…待機なの」
「はいっ!」




元気よく、返事した舞美ちゃんに腕を引かれて
空へ勢い良く飛び出した。




「いこっ!愛理」
「お、落ちるっ!舞美ちゃん落ちるぅうう!!」





高台に下されて、大げさだなぁなんて言ってる。





「大げさなんかじゃなくて、本当に怖かったのっ!」
「ふふっ、ごめんね愛理」





楽しそうに笑ってる舞美ちゃんに消えてしまうんではないかと
胸が嫌な高鳴りを起こす。





「苦しいの?」
「へっ?」



心配そうな顔で覗き込まれる。




「苦しそうに胸を押さえてたから」
「うんんっ、苦しくないよ」





風が吹いて、舞美ちゃんの髪が揺れて表情が隠れる。
雨雲が広がり始めて。






きっと、すぐに雨が降る。








「愛理」
「なに?」




顔を向ければ舞美ちゃんは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。





「敵に情をかけちゃ駄目だよ」
「え?う、うん」



それは、千聖につい半日前に言われた言葉で。
なっきぃにも、言われて。


舞美ちゃんにもなんて、そんなに危なっかしく見えるのかな…。








刹那、銃声がした。









「舞美ちゃん」
「うん、いくよ、愛理」



 
考えるのは後に今はただ、落とすことだけを考えなきゃ




空へ飛び出してすぐ、銃撃の嵐だった。




「っ!」
「愛理っ!?大丈夫!?」



腕をぎりぎりで掠った。



「掠っただけっ!」
「よかった…」




こんな、中を傷一つなく飛べる
舞美ちゃんのコントロール力に驚く反面


自分の不甲斐なさに少し落ち込んだけど少し鋭い舞美ちゃんの声。




「愛理っ!魔法使ってっ!!いかずちっ!」
「…っ!!」



手を上にかざせば少し痛む傷口。
大きな壁の上に夥しい数の人間が居てこちらを狙っていたんだ。





手を下した瞬間、大きな雷が壁の上を生き物みたいに通過していった。



「うそっ…!?」





夥しい数いた人間を焼いたんだ。そして、大勢の命が散った。
なのに、さっき焼いた人数よりも多くの人間が登ってきた。




「…恨みばかりだね」
「…うん」



念の力って強いからいくらでも中へ入ってくる。






もう一度、雷を落として
私達は近くの森へ降りた。






































ガサッ


「っ…!!」
「愛理、落ち着いて」




舞美ちゃんに諭される。
飛んでいても恰好の餌食だから


森に下りたはいいけど恐怖との格闘で
私は銃を胸の辺りから下せないでいた。



「洞窟があるよ」
「洞窟…?」



近づくと感じる悪意。
銃を持つ手に力が入る



「…愛理」
「うん」




逃げようとしたんだ。
こんな悪意を受けてまともに話せるとも思えない。





「い゛っ!」
「舞美ちゃん!?」



飛び上がってすぐ、なにかを撃ち抜かれた音がした。
直後、舞美ちゃんのくぐもった声に振り向けば


「舞美ちゃん!!」



落ちていく体に追いつける…?
いや、追いつかなきゃ駄目。



舞美ちゃんの体を追いかけて急降下をかける。
抱きとめた身体を上向きに瞬間的に切り替える





「!!」





片方の翼が捥がれ肩から腕にかけてすりむけちゃったけど
ほっと、胸をなでおろす。






「グレーのならず者共。そこに座れ」






声のするほうを見ると周りには人間。
私達は囲まれていた。







銃をむけられ。
私は手持ちの武器を捨てた。








翼がズキズキする…。
縛られた腕も痛い。




舞美ちゃんも、痛みからか息が上がってるし
このままってのもよくはない…けど、なにかを


聞き取れるチャンスでもあるからもう少し我慢。





「お前らみたいなのがこんな大きな戦争を起こすから…!!」
「聞いてんのか!?」




足も手もでる…。
死なないってだけで痛みもちゃんとあるのに…。




「ごほっ!うっ…はぁはぁ」
「舞美ちゃん?」



様子がおかしいと思って声をかけると
そのまま、倒れこんでしまった。





「ちょっ!舞美ちゃん!?しっかり!」
「おい、動くな!」





胸に向けられた銃は私の心臓を貫いたんだ。




「っ…!!」












つづく

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