ハロー王国    完結

□7話
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風が私達の背中を押してくれる。
いつだって、私達は自由なんだ。






【ある国の結託】








4人での移動なんかしたのは初めてで
体が裂けたみたいな痛みが走る。


これは、辛いかも…。





「いらっしゃい」
「ちっさーお疲れ様」





リーダーの労わりの言葉から直前会議が始まった。







「今回は初の大戦って事で研修生が参加しています、知ってると思うけど
室田瑞希ちゃん、中間守備で千聖の補佐をしてもらう」
「室田瑞希です。よろしくお願いします!」






皆も笑顔で迎え入れ。
そして、最後の作戦会議なのに和気藹々と進んでいく。







「先頭は私と愛理で」
「はい」


「中間は千聖と室田ちゃんに」
「がんばります!」
「はいよー」

「終着地点はなっきぃと舞にお願いするね」
「りょうかーい」
「リーダーくれぐれも無茶な突入は厳禁だからねっ」







書類に目を通して思う。
やっぱり、いいところはモーニングが持っていくんだ。


初期戦略のまま行くという通知が来て
ちゃんと、それぞれの国が集落を落とせたとの報告もあった。


明朝、中心の大きな集落に(ここ)集合になっている。
ここから、一キロ程はなれた大きな里を落とす。






「終わった後みんなでモツ鍋食べようね!」
「「「食べるっ!」」」


「わ、私もご一緒したいですっ!」
「もちろんっ!…愛理?どうかした?」







舞美ちゃんに声をかけられてもまだ、どこかぼんやりしてしまう。
果たして、うまくいくだろうか?


私達の国をすべて合わせても全然かなわないほどの大きさの
里を落とせる…?




「うんん、何でもないよ」
「…そう?」



やじの視線が痛いけど今は
集中しなきゃいけないよね。うん。



「じゃぁ、陽が昇る前に城門に集合ね!」
「「「「やーっ!」」」」


「や、やー!」




少し遅れて遠慮がちに聞こえる気合の声。
その後の静かなやじの祈りと願い。






「武運を祈る…解散っ!!」



皆、あっという間に散らばるけれど
ペアで明け方まで過ごすんだ。





「愛理、私達も部屋にいこっか」
「うん」



席を立てば、千聖が室田ちゃんを先輩の顔して
連れて行った。



「愛理、よろしくね」
「うん…よろしく」





がらんとした大きな食堂。
すごく、寂しげに見えたのはなぜだろう。









ーーーーーーー―ーーー










部屋に戻って、武器と防具を磨く舞美ちゃん。
羽を出したまま、こうしてみるとやっぱり私達は人ではないのよね。




「…」
「やっぱり、愛理元気ないね」





声のするほうを見ると舞美ちゃんが心配そうな顔で見てくる。





「元気は有り余ってるよ!」
「無理しないのっ」



そうして、視界が急に暗くなる。
背中をさすられて、きっと私はいつまで経っても


舞美ちゃんにとっては子供なんだ。
こんな時にまで心配させてしまう。





「ありがと…でも、本当に大丈夫」
「…そう?ならいいんだけど」






頭を離れ際ぽんぽんとされて
ひとつ、頭をよぎるのは





もし…もしも、私が怪我や落ちた時。
舞美ちゃんは絶対に助けに来る。


それは…させちゃ駄目なんだと実感する。
舞美ちゃんを守るには私が強くあることが必須条件なんだ。





「愛理、顔が怖いよ」
「…別に怖い顔なんかしてないもん」




そういえば笑って何かを手渡された。




「舞美ちゃん…?」
「お守り…私の手縫いな上に一晩で仕上げたから汚いけど」




苦笑いしてたけど手に握らされた
お守りは綺麗に出来ていた。




「すごい、綺麗…ありがとう、舞美ちゃん」
「きっと、愛理を守ってくれる、、はず」


「はず…なの?」
「いや、守ってくれる!」



そう言った舞美ちゃんと笑ってそのまま眠りに着いた。
と、いうより、はしゃぎ過ぎて寝落ちしてしまった。




「んっ…ふぁ〜…」
「…ん」




まだ、日が昇る前に目が覚めて隣には
舞美ちゃんが抱きついて眠っている。




「…(ごくっ」




少し胸元がはだけていて…。
なんていうか…その…色っぽい。


これほど、千聖の胸がほしいと思ったことはない。
私だって…!女子なのにっ!



………。



少しでも動くと舞美ちゃんが起きそう。
ってか、起きる絶対起きるこれ…。


まだ、少し早い。
私は、瞬間移動を使った。




城の外へ放り出された。






「い゛ぃっ…つっ」






着いた途端のとんでもない衝撃。
今の…なに!?



「愛理?ちょっと、大丈夫!?」
「だ、大丈夫…え?」



つい、癖で大丈夫とかいった後に気がつく。
今、相当早い時間なんだけど…。





「平気そうには見えないけど…」
「なっきぃ、なんでここに?」


「私?目が覚めたから、だから、血がね、にじんでるから」
「なんだ〜愛理も同じ」



そういうと少しイラついたなっきぃに思い切り服をまくられ
背中をバシッって音がするほど強く叩かれた。




「あ゛ぁっ!なにすんの!?」
「手当て」



私が悶絶してる横で手をかざして癒してくれる。



「すごい、痛くない」
「それなら、よかった」



思いのほかテンションがあがってしまって。
なっきぃに苦笑いされた。



「ねぇ、なっきぃ」
「ん?」

「千聖の腕も治してもらえない?」
「あぁ…あれ、銃の傷でしょ?」



物理攻撃は治せないんだって困ったような顔で笑うから
なんだか、悪いことしたかも…。




「だから、翼を狙われないようにね」
「翼?」


「そう、飛べなかったら人と変わらないから」
「そう、だよね…」



傷は中々治らないもんね。
気をつけなきゃっ!





「鈴木さーん!!中島さーん!!ごはんですよっ!!」



叫び声に近いような声が聞こえて
上を見上げると広場になっている所から室田ちゃんが手を振っていた。




「そういえば、お腹すいたねぇ」
「戻ろっか」




































食堂に入ると皆いて。
おいしそうなご飯が並んでいた。



「わぁ、すごい!」
「どうしたの?これ」




にこにこした舞美ちゃんが教えてくれた。




「ちっさーと舞ちゃんが作ってくれたんだよ」
「そうなんだ、すごいおいしそうっ!」


「だろー?腹ごしらえだよ、腹ごしらえ」
「まい、お腹すいたー」



「よしっ、じゃー食べよう」




舞美ちゃんの横に座れば皆の顔が見える。
ご馳走を見る皆の顔は幸せに満ちていていつもと


変わらない風景なんだ。






わいわい食べた後は城の入り口の前で輪になって集まる。




「せーの!℃-ute!舞美!」
「早貴!」

「愛理!」
「千聖!」

「舞!」
「瑞希!」

「六人そろってー?」
「はじけるぞーいっ!」





重なっていた手が離れて
ぱちぱちと叩き合って儀式が終わる。



「おいでっ!、愛理」
「舞美ちゃん!」



すごく嬉しそうに手を広げてくれた舞美ちゃんに
抱きついて集合場所まで飛んだんだ。



































「愛理、早い」
「じゃぁ、ナカジマ達もそろそろ行こうか」





ナカジマと舞が二人で飛んでいった。
室田ちゃんと残されて





「じゃぁ、千聖達も行こう」
「はいっ!」




飛んで、最初に目に入ったのは佐紀ちゃん。



「おつかれー」
「おつかれ」



佐紀ちゃんがりんごをひとつくれた。
真っ赤な、つやつやのりんご。



「ここも、先頭組が暴れだせば激戦地区になるから今のうちに食べておきな」
「うん…ほら、室田ちゃんも」




放れば危ういながらもしっかり胸の辺りで取っていた。



「ありがとうございます」



座って食べ始めれば、佐紀ちゃんが呼ぶ。



「食べろって言ったり呼んだりどっちだよ〜」
「いや、さすがにその服見たらね」



新しい戦闘服とマントを渡されたけど



「いや、いい」
「どうして?そんな血に濡れた服は脱ぎなさいって」


「綺麗事かもしれないけど…これだけ殺したっていう証明。
罪を忘れないために戦争が終わるまでは着てるつもり」
「そう…室田ちゃん、だよね?」



「はい!室田瑞希です」



佐紀ちゃんは優しい。
舞美ちゃんといい、千聖は良いお姉さんに恵まれてる。




「せめて、マントつけない?」
「で、でも…私のようなものが…」



困ったように遠慮して千聖を見てくる。
だから、教えてやるんだ。



「着せてもらいな、血除けにもなる」
「…はい、清水さんお願いします」


「はい、どうぞ」
「ありがとうございます!」



つけたかったんだろうな。
すごく、うれしそうにつけようとするけれど


うまく、つけれないらしく悪戦苦闘。



「ほら、こっちおいで」
「す、すみません…」



佐紀ちゃんがつけてあげている。
最初の申し訳なさそうな顔から喜びが隠せない感じが見て取れる。






刹那、なにかがはじける音がした。





「佐紀ちゃんっ!」
「うん、始まったね」








つづく

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