ハロー王国    完結

□6話
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一人は皆のために。
皆は一人のために。



【ある国の想い】




千聖に返されてすぐ着地したところに
舞美ちゃんとなっきぃと舞ちゃんが待機して待ってくれていた。


「任務は遂行しました」

「お疲れ、詳細聞きたいからお疲れのとこ悪いけど」
「うん」


みんなで会議室に入る。



「べりーずはどうだった?」
「遂行の弾煙が上がりました」



そういえば、皆ほっと一息。


詳細って言っても私のではなく
任務自体の詳細で助かったって思ったんだよね。



「そういえば、室田ちゃんはどう?おびえてない?」
「あの子優秀だよ、千聖が中であの子は外の指揮をしてくれてた」


そういうと、みんな、ほっとしたようだった。
そういえば、すごく考え込んでいたようだったから。


千聖を置いてきたのは心配かも。




部屋に戻って窓から見える空を少し眺めていた。
なんだか、胸騒ぎがしてたまらない。



「愛理、いる?」
「っ…!い、いる」



無意識に飛ぼうとしていた所に声がして。
引きずり戻された意識で声が裏返る。


「入るよ?」
「どうぞ」



入ってきてそうそう疑いのまなざしにさらされて。
きまずい。



「なんか、すっごい声が裏返ってたけど大丈夫?」
「う、うん」



なっきぃにお茶を出すと少し苦笑いされていて



「愛理、なにか決めたんでしょ?」
「…うん」


でも、言っていいのかな…?
こんなの我侭ではない?


「愛理?」
「…なっきぃ、お願いがあるの」



なっきぃの真剣な顔久しぶりにみる。


「大戦の先頭補佐…私にやらせてほしい」
「補佐って…!さすがにそれは」



わかってた、きっと仲間を大切にするなっきぃだからこそ
この役目、なっきぃがやるのだと知っていたんだ。



「無茶も承知だし、我侭なのもわかってる」
「補佐は…一番危ない仕事なんだよ?千聖の同行の比じゃないよ?」


「わかってる…でも、危ないからこそやりたいの…私は何かを守れる
強さがある、それは使うべきだと思ったの」
「…千聖の同行の申し出の意味がわかった気がする」



そう、言ってあきれたように笑ったんだ。



「お願い…リーダーを守って、愛理」
「…!もちろん!」


「それから、最後まで諦めるのはなしだからね」
「…うん、絶対成功させる」



握られた手を握り返した。
仲間を守れるならば


私は――鬼にだってなれるんだ。

























深夜、部屋の窓をあけて空を眺める。
きれいな星空。



「…」


格好のいいこといいながら
実はどこかまだもやもやしていて。


「はぁ…」


最後に見た千聖の顔が忘れられなくて。
あれは、絶対に何かを企んでいた。


期限は明日の深夜。
今日は自由だし…少しくらい…。



それに、果たして室田ちゃんだけで抑えられる?
あの千聖を……。無理だよね。





「よしっ」




窓から飛び出して私は飛んだんだ。




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鈴木さんを帰してすぐ
岡井さんが兵に命令を下し


処刑部屋にこの集落の人間を入れ
私は部屋の外に弾き出された。


ドアは閉められて
どんなに、叩いても反応もない。




「岡井さん!!あけてください!」




悔しい…!私にはこのドアを破る力もなければ
人を説得する力もない…。



おもわず、しゃがみこみそうになったときだった。



「…!」



大きな力の波が届いた。
これは、鈴木さんだっ!


気がつけば城の中を走っていて。
入り口にいた鈴木さんが目に入った。



「鈴木さんっ!!」
「え?む、室田ちゃん!?」



すごく、驚いていたけどこんなのんびり話している
暇はない!いますぐ、鈴木さんを連れてかなきゃ!



「どうしたの?ちょっと、室田ちゃん!?」
「詳細は後です、来てください!!」



部屋に近づくにつれ銃声の音が響き始める。
それに、鈴木さんが気づくのに時間はかからなかった。



「…!千聖!?なにやってんの!」



ドアに触れた瞬間にドアノブを壊し
迷うことなく中へ入って行った鈴木さんの背中がすごく


大きく見えました。








ドアが開いたことによって部屋が見える。
人間が山のように片隅に積まれていて


まだ、この人間達は私達に危害を加えたわけじゃないのに…。
これじゃぁ…私達のほうが悪じゃない…。



「なんで来た?」
「帰り際の千聖の顔が気になったから」



中へ入る勇気がない。
果敢に岡井さんの前に立てる鈴木さん。


私はあと何年すれば同じ土俵に立てるかな?
こんなことを思うために感じるために


派遣されたの?
それとも、国になるってこんなにつらいことだらけなの?




「構え」
「千聖!」


「撃て!」
「っ!」


岡井さんの命令でまた5人の人間が倒れこむ。
瞬間、鈴木さんは岡井さんの服を掴んだまま目を瞑ってしまった



「何で、なんでこんなこと…!」



鈴木さんから離れて死体置き場へ死体を放り投げている



「…占拠ってこういうことだ、帰れ、愛理」
「なんで、任務はここまでが任務なんでしょ?なんで私を帰すの」


「…室田ちゃん、死体、外に投げるの手伝ってくれる?」
「…」



声が出ない。
体も…動かない。


ど、どうしよう…岡井さんに怒られる…!



「…そこで見てな。国になりたいなら」
「は、はい…」



少し前にいた、立ち尽くしていた鈴木さんが
死体を投げ捨てている岡井さんの腕を掴んだ。


手を上げたから岡井さんを叩くのだと思ったら
立てかけてある銃をとり。




「先に始末しよう…それからでもいいでしょ?」
「残りは明け方する予定だったんだ」





だから、気にせずに帰れという岡井さんに
あっさりとその場に慣れていく鈴木さん

鈴木さんは、鈴木さんだけはこちらサイドだと思っていた。
気持ちを最優先する人だと


でも、そんなこと…なかったんだ。










それから、三人で死体を窓から外へ放り投げて
城の外へ出た。




「じゃぁ…火をつけるから離れて」



死体を燃やしてるだけなのに
火柱みたいに燃え上がりとても綺麗。




「…どうせ、何も言わないで来たんでしょ」
「なんで分かったの…」


「分かるさ…何年一緒にいると思ってんだよ」
「…そうだよね。仲間だもんね」



岡井さんでもこんな顔するんだ。
私も国になりたい。


私も信頼できる…仲間が……ほしい。



もう、駄目かも。
私、少し辛い…。


「室田ちゃん!?」
「え?ちょっ、どうした?愛理、どうする」


鈴木さんが背中をさすってくれる。
いつも、矢島さんの近くに居れる鈴木さんが


うらやましい。
私も…大切に、思える人が…。



意識が遠のいてく。
そのまま、私は意識を手放した。








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飛んだらあまりの急展開が待っていた。
来るなり室田ちゃんにつれてかれ


ドアを破れば泣きそうな顔をした千聖が
人を処刑していたり。



で、人を燃やしてすぐ室田ちゃんがしゃがみこんで
意識を失ってしまった。



「ちょっと、無理させすぎちゃったかな」
「とりあえず、部屋に運んであげなきゃ」



布団をかけてあげると
千聖に腕を掴まれて外へ連れて行かれた。




「ちょっと、ちょっ…千聖!」
「聞こえるか?」


そう、言うから少し耳を澄ますと
どこからともなく、うなり声がする。


「な、なにこの声…」
「今日、処刑したのは女、子供だけ」


な、なんで…弱いものから…。


「これから、男を処刑する…男は情報を引き出すために
拷問を交える…だから、帰れ」
「…帰らない」



真剣な顔からガンを飛ばされる。



「人の話聞いてた?いい子ちゃんの愛理には刺激が強いから
帰りな?明日の夜にはここで会議だろ?そのときに来ればいいじゃんか」
「それじゃ、遅いもん」



顔がすごく怖いけど、私は屈しない。
千聖にばかり辛い役目を負わせる訳にはいかない。



「なんでだよ!城を落とすまでだ!それまでなんだよお前の任務は!!」
「なんで一人で背負い込むの!?そんな泣きそうな顔した千聖見て
ノコノコ帰れる訳ないでしょ!」



綺麗なところばかりだけで
汚いところは押し付けてなんてそんなんで


舞美ちゃんの横に立てるわけない…そんな資格ないもの。



「なっ!泣いてなんかないっ!」
「泣いてないね」

「…ちっ」
「千聖」



陽が昇り始める。
小鳥の囀りとかこれからなにかをするには



滅入るほどの爽やかさ。



「後から後悔しても遅いんだからな」
「ありがとっ!」



手をぶんぶん振り回すと
犬みたいにぎゃんぎゃん怒ってた。




銃声と悲鳴と冷酷な顔をした千聖と。


ちなみに、銃を扱うのは私。
拷問は趣味だからと譲ってくれなかった。



「はい、こいつよろしく」
「了解」



狙いを定める。
おびえたと苦痛にゆがんだ顔を見ながら


躊躇いもなく私は引き金を引けるようになっていた。



「や、やめてくれっ!知ってることは何でも言うっ」
「じゃぁ、知ってることすべて吐け」



カサってかすかに音がした。
瞬間、銃声がしたんだ。



「っ…!つっ…」
「追えっ!!逃すな!」



近くに居た兵に命令を出し。
千聖に駆け寄ると腕を掴んで冷汗をかいていて



「くそっ!いっつっ」
「服破くよ」



患部に直接手を当てる。
このくらいの痛みをとるくらいなら出来る。


「いい…やめろっ!汚れるから」
「うるさいっ!…黙って」


苦痛に歪む顔が少しづつ緩和される。
よかった、今回ばかりは力に感謝



「…さんきゅ」
「うんん、もう痛くない?」



包帯を腕に巻いてあげると
少し腕を動かして悪戯な笑みを浮かべたんだ。


「うん、痛くない」
「よかったぁ」


「遅かったな」
「え?」


千聖の発言に後ろを振り返ると
だるま状態になっている2人とさっき追いかけていった兵士。



「遅くなり申し訳ありません!あまりに抵抗したため手足を落としました」
「よし、よくやった」



そういうと、さっきよりもひどい拷問が始まった。
歯を抜かれ血だらけになるだるまに背中に火をつけられて悶えてるだるま


「千聖にこんなことした落とし前きっちりつけてやるからな」
「…」



不敵に笑う千聖。
この2人で最後だから時間はあるけれど。


「あぁああああ!」
「がぁあぁあっやめてくれぇええ!」



「愛理、銃貸せ…それに終わったら呼ぶから昼食でも
取ってきていいよ」
「…うん、わかった」



少し寝てしまって。
陽が傾き始めた頃兵士が呼びに来てくれた。



「千聖」
「終わった…悪い、もう夕方に」



すまなさそうな顔でこっちを見る千聖にはっと思い出す。
私、黙って出てきたんだった…!


室田ちゃんもこっちをみて会釈してきた。



「昨夜はありがとうございました」
「うんん、気にしないで」



「さんきゅーな助かった」
「何もしてないよ」



珍しいくらい、笑ってる。
やっと、任務がひとつ終わったんだ。



「じゃ、早速で悪いけど皆を連れてきて」
「うん」

































戻って早々誰かに抱きしめられた。
この感じ、舞美ちゃ…あれ、もう見つかった…?



「もうっ、皆で探したんだよ!」
「いたっ!…ごめん」




頭を軽く叩かれて、周りを見渡すと皆そろっていて





「千聖のところに行ってたの」
「だと、思った」



目がなくなるような笑顔でそういわれると
少し申し訳ないなって…。



「でも、よかった」



陽がしっかり暮れた頃
皆で手を握り



「飛ぶから手を離さないでね」
「「「ok」」」



繋がってるのを確認して
占拠地へ飛んだんだ。








大きな争いの幕が切って落とされた。













つづく

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