℃-uteマンション

□番外編
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人を大切にするってなんだろう
恋とも違う、愛とも。


私たちの関係はなにかが違った。






【℃-uteマンション もも編】




罵声罵倒。
それは、暴力ではないのかな?



「なんで俺がこんなこと言われなきゃいけないんだ!
おまえのせいで散々だよ!!」
「…」




痛みは隠せば見えないから




「お前おかしいよ!全部おまえが悪い」
「…」


「お前さえいなければすべて違ったんだ、頼むから消えてくれ」



言い返しても、悪化するだけだとわかっているし
なによりも、痛い思いはしたくない。




黙ってさえいれば顔色を伺えば
その場だけですむ。



世間に出ることを禁じられたももの日常は
そんなことから始まる。





「もも?散歩いかない?」
「いい…ほっといて」



同じ境遇にいるみや。
だけど、ももよりは自由に動いている。




「少しでいいからさ」
「…わかった」





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ももは、いつも我慢してる。



『泣き虫もも』


それがもものみんなのイメージで大人がももに対して抱く感情。
だけど、うちは知ってるんだ。



さっきも、すごく傷つく言葉を言われていたけど
下向いて黙り込んでその言葉を肯定して


どこが…弱いんだろう。



「慣れだよ慣れ、みやだってそうでしょ?」


そんな、言葉になんて返していいかわからなかったし
なにより、うちは痛みに鈍感になっていくももを見てるのはいやだ



「もも少しは食べてる?」
「それなりにはね」



うまくはぐらかそうとする。



「すっごく細くなった気がするんだけど」
「そんなことないよ」


「…つらい?」
「みや?」



きっと、自然がきれい過ぎたから。
そんな言葉がこぼれたんだ。



「ももは夢も希望もあるでしょ?」
「もちろん、捨ててはないよ」



当たり前のように驚いたって顔で言われて
そうだよね、こいつはそういうやつだ。



「学校に行ったり、ご飯もおなかいっぱい食べたいし
痛いことされるのも終わりにしたい、暴言や罵倒はもっと早く終わらせたい」
「うちも!学校いったりご飯たべたりしたい!痛いこともいたい言葉もいらない!」



うちらは世間の言葉で捉えるならば小学校3年生
本当なら義務でいけるはずだった学校へも行けていない。



うちらは2人でいれば無敵だった。
二人でいればつらい話より明るい話が多かった。









二人でいれば…未来が輝いて見えていたんだ。








その一年後、ももは姿を消した。










唯一の仲間が消えうちは日常から光が消えたんだ。








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今のまま生きていくのはもったいない。
なにも、知らな過ぎているし



なによりも、この世界のおいしいところだけを知らないから
ももは裏でもいい。


世界に飛び立ちたかったの!








それはある日のこと。





元々、お父さんが借金にまみれた人で
それをももに押し付けて逃げたせいでももが追われていた。


家族はいる。
大切な友人も




それを守るにはどうすればいい?
痛いことは隠せば見えないの。




お母さんに借金をかぶせなかっただけでも
お父さんを見直すレベル。


ももはついてる




お世話になっていた親戚のおうちでされてたことだって
仕方がなかったんだ、居候だったし。



ひどいこといわれたって平気。




みやが…いてくれたから。








「高島さん!いましたガキです!」
「あぁ…いたか」



前髪をつかまれて引き寄せられる。
ってか、前髪乱暴に扱わないでっ!!



「ボスのところに連れてくぞ」
「はいっ!」



そのまま、部下みたいな男に担がれて連れて行かれた。
何度か背中に肘チョップを入れたけど



「おとなしくしろ!」
「っ!」



倍返しとなって戻ってくるからあきらめた。
そもそも、どこに行っても変わらないし。



ももの人生、よかった時期のほうがはるかに少ない。



だからなのかな…逃げようって気は最初から特になかった。
つかまったのはお腹すき過ぎて動けなかっただけだし。




「ボスっこいつです嗣永の娘」
「…確かに似てるな」


「まわしますか?」
「…わからないのか?その目じゃ売れはしない」



そういわれて、ももを担いでた男がももの顔を覗き込む。



「上玉の部類ですよね?」
「大半は風俗だからな、そんな目つきじゃ買ってはくれんだろ」



そういうと、ボスと呼ばれた人物はその男の上司
高島とよばれてた人をこさせた。



「高島、お前にまかせる」
「で、ですが女の子が勤まるような仕事では…!」




不敵な笑みのボスになんだかももの生き方が変わる予感がした。




「だめだったらそれまでだ、使えれば儲けものだろ」
「そ、そうですね」




ももの方を向き少しきつい目を向けられる



「高島だ新人教育全般を受け持っている」
「…」


「返事くらいしたらどうだ」
「…」



癖ってなかなか抜けないものなんだと
そのとき初めて知った。






























自分の身は自分で守れとか
痛くない方法とか



驚くばかりの毎日だけど
あの場所にいるよりも生きてる気がする。





「嗣永は本当に優等生なんだな」
「…」


「だって、お前。俺の言うことにしか従わないし
それ以外はロボットみたいに黙って立ってるし」




なにを言ってるんだろう?
そんなことしたら、追い出されるし


生きてなんかいけないし
そう、叩き込まれた唯一勉強させてもらえた事だから


簡単には破れない。




「まぁ、お前がいいならいいけどよ」
「…」



ももはおかしかったのかな?
それすらも、わからない。



「あの」
「え?…え」


驚きがすぎて顔が面白くなってる。



「お願いがあるんです」
「どうした?なんでもいってみろ」


「ももは役に立ちたいんです」
「ん?あぁ、そうか。うん、で?」


「ですから、知識を私にも分けてください」
「必要か?」


少し困ったように聞かれる。



「基本的なことだけでいいです。字の読み書きとか」
「読めないのか?」


さらに驚かれて



「…そうです、だから」
「わかった、出来る範囲教えてやるよ」





そんなやり取りから1年が過ぎた。





「驚くほど馴染んだな」
「…生きてるって感じはします」




勉強まですべて高島一人で教えてくれた。
正直、相当感謝してるし


最近は高島のことを先生と呼ぶ事にしていた。



商品の手入れも手を出し始めたし。
勉強も基礎をやったから今は一人でもできる。







そんなやっと自立し始めた時の出来事だった。







「嗣永」
「なんですか」


「お前と同じ境遇のお友達が来るそうだ」
「お友達?」



「そうだ、矢島と言ってな」
「矢島…へぇ〜楽しみ〜」



別にそうでもないけど




「あまり、興味はなさそうだな」
「…ももは商品のとこ行きます」



先生にはかなわない。
もっと、精進しなきゃ



「矢島はお前と同い年だ、なにか発見があるかもしれねぇぞ」
「気が向いたら顔出しますね」



先生の顔は見ずにももは部屋を出た。






「今日はずいぶんと元気ねぇな」
「…そんなことはありません」



もしかしたら、ももは自分で思う以上に顔に出やすいのかも
気をつけなきゃ…。



そういえば、矢島と言った…下の名前はなんて言うんだろう。




何度かの夜を越えて。
何度目かの朝を迎えた。


けど、とくに変わりなく。




日常に友達の存在が消え始めたころだった。





歩いていけば鞭打つ音が聞こえる。
めずらしい、こんな夜更けに。





壁に耳を寄せ息を殺す。


「うぁっ!つっ…」

「いい声だすじゃねーか」
「う、うるさいっ!」


「言葉使いに気をつけろ!」
「あ゛ぁ!」



…いつもの女の子の声と調子に乗った商品係の声だった。
あいつ、最近浮かれてたのはこういうのからだったんだ。



物陰に身を隠して1時間ちょっと。
ドアが開く音がした。



「大丈夫ですか?」
「つっ…だ、いじょ…」



つられている鎖をはずして
腕や足のロープを切っていく。


大体、いつも気を失ってしまうから
そのままだけど、今日は動ける元気があったらしい。



「あ、動ける?」
「…むり」

「だよね、酷いもん」
「組織の人間?見た事ないけど」


目隠しをとったその顔は想像よりも遥かに幼くて
下手をすればももと同い年くらいなんじゃ…。


あれ?たしか、矢島さんってももと同い年の子がいるはずだけど
あの話はどこに…。



「うんん、君と同じ立場」
「…同じ?だったら、組織の人間じゃ」




とりあえず、手持ちの薬を塗りこんでいく。
少し顔をしかめるけど何もしないよりマシだからね。




「ペットは所属してることにならない」
「あ、そうか…でも…用心棒って」

「用心棒なんて、名前だけでしょ?」
「…」



なんだろう…目がきらきらしてるし。
この子はももよりも表の世界に染まってるんだ。


だからかも、ももにはまぶしすぎる



「いっとくけど、ももを信用したら痛い目見るよ?」
「もも?」



疑問系で返されて失言に気づくけどもう遅い。
こうなったら、やけだし名乗ってしまう。




「そう、嗣永桃子…私の名前」
「ももか、よろしくね。私は矢島舞美」



矢島?…矢島って先生が言ってたあの矢島?
やっぱ、この子だったんじゃん!


もも何回も助けてたし!
気づかなかった!



「え…あ、…舞美?よろしくね」
「うん、よろしく!」



うわさの矢島さんの下の名前も知れたし。
少し満足してたら腕をつかまれてぶんぶんと振り回される。



「まったく、純粋な犬だね」
「…犬?」



おでこをはじいてやると
涙目でおでこを押さえながらこっちを見てくる。



先生は舞美に教えたのかな?
商品、言っても大丈夫だよね?


うん、言っちゃえ。



「そういえばね、もうすぐ商品がやって来るんだよ」
「あ、聞いた」


なんだ、なら話は早い。



「商品って何だと思う?」
「え?…商品…」

「うん、分かるかな?」
「…わかんない」


「人間の女の子」
「へっ?…えっ!」




まったくもって鈍い舞美にレクチャーしてたら
だいぶ時間が過ぎていることに気づく。



「そろそろ、戻らなくて大丈夫?」
「え?…あ!戻らないと!」


やっぱり、犬だよね。
うん、忠犬。


「じゃぁ、また会えたら」
「うん!今日はありがとう!」



走っていく後姿になんだか寂しくなったのは
見なかったことにしようと決めた。




それから、かなり経った頃。



それなりに仲良くなって。
友達ってこんな感じだよね?


試行錯誤が始まっていた。



毎日元気でパワフルな舞美の初恋?
かな、その恋は唐突にはじまって


しかも、相手は商品だという。
強情でなかなか壊れない


そんな子を助けたいと。
自由にしてあげたいんだときらきらした顔で言うの。



無理だと言っても諦めが悪いし。
この顔は一番最初に見た顔だよね。

絶対に仲良くなんかなれないんだと、思った顔だった。



「ね、お願いっ…もも」
「…いいよ、協力するよ」




そうして、大脱走劇が幕を開き。


「ここを通ればすぐに交番があるからここまでは追いかけられない」
「そっか、誘拐できないもんね」



逃走ルートを確認していく中
もう、会えないのかなって思ったら少し…


寂しくなった。




「もも?どうかした?」
「うんん、今日だよね?しっかりやんなよぉ」


「うん!ありがとうもも」
「お礼は出れたら心で言ってよね」



シッポでも見えたらきっと、ぶんぶん振っているってくらいに
嬉しそう。

無理を覆してくれるのをももはどこか期待している
普通に考えれば無理だし、殺されてしまうのが落ちだから。




だから、ももは見届けたい。
光の中を自由に羽ばたいていくところを。









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