℃-uteマンション

□℃-uteマンション 4
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痛かったけれど諦めれば楽だった。
受け入れてしまえばそれで生きていけた。

けれど、君が居た。




【℃-uteマンション 4】




私の両親はいい人だった。
違う、ただのお人よし。


ある日、お父さんの友人が逃げた。
借金を残して。

そして、両親は監禁された。
その友人は父に借金を押し付けていたのだ。



裏社会で生きている人は金になりそうなら
骨の髄までしゃぶる。

ドラマで見るようなのではなくて
現実は、とっても残酷だった。


「お母さん…」
「大丈夫よ」


父は毎日拷問された。
母も毎日強姦された。


私は、それを見ている事しか出来ない。



鎖でつながれた足を見ながら
隅で震えてる事しか出来なかった1年間。



あるとき、両親を解放できるチャンスが来た。



「お前らの娘よこせ」
「そ、そんなの出来るわけないだろ!」

「そしたら、開放してやる」
「…渡さない」

「よこさなきゃ、お前ら殺していただくまでだ」
「うわぁぁ!」




母は私を抱きしめてくれている。
父は相手に向かっていった。


その瞬間、私は人が殺される瞬間を
はじめて見た。


「おか、あさ…」
「大丈夫、大丈夫よ」

「こわい…こわいよ」
「大丈夫だからね」


そして、お母さんが重くなった。
どんどん、押し寄せてきて、押しつぶされる!

って、思って目を閉じると、男の人がお母さんを放った。


「お、おかあさん!」

「おい、ガキ」
「…」

「お礼もいえねぇのかよ」
「…お母さんにを酷く扱うな」


そういうと蹴っ飛ばされた。
鎖のじゃらって音が響く。


「くそ生意気そうなガキだな」
「っ!…」

「なんで、ボスはこんなガキがほしいんだかな」
「はなせっ」

「うるせぇよ」
「がはっ!」


あごを指で上げられる。
怖いけど、暴れたら蹴りが飛んできて

私は気を失った。


なにか、声が聞こえる。
でも、聞き取れない。

すると、突然、あるものが降ってきた。


「うわっ」
「さっさと、起きろ」

「…冷たい」
「外の水だからそりゃ冷たいだろ」

「…」
「ボスがもうすぐ来るからこい」


足につけられていた、拘束具の痕が残ってる。
男と一緒に片足を立てて待つ。

痕を指でなぞると横から声がする。


「そんな痕、気にならないくらい痕がつくぞこれから」
「…」



初めて会った、ボスと呼ばれる人は
見るからに怖かった。

裏世界を牛耳る人だと聞いた。


「いい目をしてるな、高島」
「はい」

「この子をお前に任せる」
「…はい?」

「育てろ、ペット兼用心棒くらいにはな」
「承知いたしました」



今、思えば高島はあの世界ではいい人の部類だと思う。



「相当気に入られたな」
「…」

「よかったな、売られなくて」
「…」

「お前の容姿だったら確実に売られる…普通だったらな」
「…」


ぞっとした、売られる?
私は、闇の中で生きてるんだって知るには十分だった。



「そして、教育全般を受け持つ高島だ」
「…」

「返事くらいしろよ」
「おねがいします…」


そういうと、わしゃわしゃと頭を撫で回された。
気持ちをしっかりもたないといけないのに

なぜか、ほっとした自分が許せなかった。


「ペットとしては媚びて欲しいところだけど」
「…」


顔を上へ向けさせられる。
品定めされるってきっとこういうことだ。


「ボスは生意気なやつを順従にするの好むからいいだろう」
「…はなせ」

「ほんと、生意気なガキだな」
「…暴力で言う事聞くと思うなよ」

「そんなこと思ってねぇよ」
「…え」


こいつは、すこし変なやつだ。



私の生活は一変した。
毎日、毎日、武道とか強くなるための基本を叩き込まれる。


「がはっ!…ごほっごほっ…」
「ほら、立てまだ終わってねぞ」

「うっ…うりゃぁぁ!」
「甘い」


壁に体を打ち付けて意識が飛びかける。


「たく、ガキはこれだから」
「が、がきじゃないっ!」


「お前、面白いやつだな」
「うっ…うえっ」


殴られすぎてなにかがこみ上げてくる。
気持ち悪くてたまらなかった。


武道だけじゃない、私は体の開発もされている。
私の処女をうばったのは、男自身ではなく。

道具だったんだけどね。



「ほらっ、力抜け」
「うぁ…っ!」

「まだ、指じゃないと無理か」
「や、やぁ」

「たく、ほら力ぬけって」
「む、むりっ」

「気持ちいいって感じれないと辛いのはおまえだから」
「つっ…いたぁ…」


私の当時の年齢は10歳。
自由に動けるようになったのは2年後。



それでも、訓練は継続させられていたけれど。



「矢島、おまえ昨日どうしてこなかった?」
「ボスの所に行くといってあったはずだけど」


またか。ため息がつきたくなるけど我慢。


「そんなの言い訳にならねぇだろこっちこい」
「…」


正直、振り払ってもいいんだけど。
ボスは私をいじめるの好きだからちくられたら


酷い目に合わされそうだし。
何より、いざこざは面倒くさい。


こいつらは、卑怯だから
絶対、告げ口される。

気がつけば、身動きが取れなくなっていて。
気持ち悪い笑顔で気持ち悪い触り方をされる。



「悪い子の矢島ちゃんにはお仕置きをしてあげようね」

ぞっとする。



お仕置きとは鞭打ちの事で。
こいつらはそういう趣味なんだと思う。

痛みとしてはそんなに辛くはない。
高島の武術のほうが数倍辛い。



「うぁっ!つっ…」
「ふふっ、可愛い声」


でも、後半は辛さが増す。
裂けた傷に鞭が当たればそれなりに痛い。



「大丈夫ですか?」
「つっ…だ、いじょ…」


いつも、終わるとそのまま放置されて困っていたんだけど
何時からか、声の高い女の子に助けられるようになった。

目隠しされてるから、顔を見た事は一度もないんだけど。
この組織の人間ならいつか出会えるはず。


今日も、例外なく終わると同時に入ってきて助けてくれた。
今日こそは顔を見るんだ。



「あ、動ける?」
「…むり」

「だよね、酷いもん」
「組織の人間?見た事ないけど」


ゆっくりと、痛くないように体を下ろしてくれる。
首に落とした、目隠しの布を取り払ってくれて。

「うんん、君と同じ立場」
「…同じ?だったら、組織の人間じゃ?」

薬を塗りながら話す。
器用な人。

「ペットは所属してることにならない」
「あ、そうか…でも…用心棒って」

「用心棒なんて、名前だけでしょ?」
「…」



そういわれてみればそうで、って事はこの子は仲間?


「いっとくけど、ももを信用したら痛い目見るよ?」
「もも?」

「そう、嗣永桃子…私の名前」
「ももか、よろしくね。私は矢島舞美」

「え…あ、…舞美?よろしくね」
「うん、よろしく!」


手を取ってぶんぶん握手する。
ももはなんか吃驚してる様子だけど

べつにいい。
仲間が居たとは、嬉しい限りだった。



「まったく、純粋な犬だね」
「…犬?」


そういうと、何かを悟ったかのような顔で
おでこを弾かれる。




「そういえばね、もうすぐ商品がやって来るんだよ」
「あ、聞いた」

ニヤッとさっきとはまるで違う。
不敵な笑みというやつを浮かべる。


「商品って何だと思う?」
「え?…商品…」

「うん、分かるかな?」
「…わかんない」

そういうと、ももは近づいてきて
私の耳元でさらっと言った。


「人間だよ」
「え?!」

「かわいい、女の子」
「それって…」


伏せた顔からは表情を読めないけど
悟るというより、諦めに近い色を感じた。



「来た時に言われなかった?」
「何を…」

「売り飛ばされなくてよかったなって」
「あ…いわれた」


「これから来る子たちは商品、私と舞美はペット」
「ペット…」


ふっと、顔を上げたもも。
その表情は怒りに満ちていた。


「そっ、同じようでまるで違う…同情はだめだよ」
「…もも?」

そういうももは私にアドバイスをくれていた。
それを分からず、走ってしまった私はやっぱり

ダメなやつだったのかな。







愛理との出会い。
そして、脱走。

私は現実が見えていなかった。

高島ともも。


後で知る、リアルは信じられないほど大きかった。
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